深センの自家焙煎の喫茶店で飲んだエスプレッソ
今回の記事では、ロブスタ種 (ロブスタコーヒーノキ) のコーヒー豆でエスプレッソを淹れる際の、コーヒー表面にできるクレマ (細かく乳化した泡) のつくり易さ (もしくは安定性) を検証してみました。(マニア向けの話です)
通常、クレマは機械式のエスプレッソマシンで抽出しないとうまくできませんが、コンロで使用する直火式エスプレッソメーカー (マキネッタ) であっても Kamira (カミラ) であればそれなりにクレマはできます。(カミラやその使い方に興味のある方は、下記の記事もご参照下さい!)
今回はマキネッタであるそのカミラを使用して、ロブスタ種がクレマのつくり易さに効果があるのか確かめてみました。(上記をマキネッタで確認した例がウェブ検索しても出てこなかったので...)
なぜロブスタ種 (Robsuta) なのかというと、下記のように普通の機械式エスプレッソではロブスタ種がクレマ (crema) に対して良い影響があることが知られています。(元客員教授の方のサイトからの引用ですが、きちんと研究論文を引用して述べています)
The second element which fights against a good crema is the oils and small (hydrophobic) particles in the coffee. It is well-known that Robusta coffees are easier to foam than Arabica - that's because the Arabica has ~3x more strongly hydrophobic oils and oils can be good antifoams. Because Arabica has more overall flavour, and because the o/w emulsion (created within the espresso process) adds to the richness of the overall drink, it is worth the extra effort required to get a good crema with the Arabica.
Latte Foams | Practical Surfactants Science | Prof Steven Abbott
上記の引用には、クレマがつくり易いロブスタ種ではなくアラビカ種 (Arabica) がエスプレッソによく使用される理由も述べられていますが、簡単に言えばアラビカ種の方がロブスタ種よりもコーヒーとして風味が豊かだと認識されているからです。
これはエスプレッソだけでなく普通のハンドドリップなどで淹れるコーヒーでも同様で、アラビカ種の方がロブスタ種よりも風味豊かだと認識されています。
▼参考
コーヒーの植物学 | コーヒー百科 | 知る・楽しむ | コーヒーはUCC上島珈琲
そのため、ロブスタ種は通常は単品では使用されずに、味の調整やコストダウン目的でブレンドコーヒーで使用しようされたり、インスタントや缶コーヒーで使用されたりすることが一般的です。
個人的にはクレマに与える影響だけではなく味の方にも興味があり、ものは試しに100%ロブスタを一度飲んでみたいと思っていました。(ロブスタ種でも品質がよいと言われているものもありますので...)
というわけで、今回はロブスタ100%で、カミラを使って直火式のエスプレッソを淹れてみた結果を報告します!
使用したロブスタ種について
今回に使用したロブスタ種については下記の通りで、品質はできるだけよいものを選びました。
- 産地 :インドネシアのジャワ (ジャバ)
- 等級 :WIB - G1
- 処理法:水洗式
- 価格 :約420円/500g (そんなに安くはないです...)
上記のロブスタを中深煎りに自宅焙煎しました。(上記の写真の右)
焙煎には最近ハマっている片手鍋を使用しました。
比較用には、常飲している雲南コーヒーを同じく中深煎りで用意しました。(精製方式は水洗式のものを使用、品種はアラビカ種のカチモール)
なお、ロブスタ、雲南コーヒー共に焙煎してから2日後の焙煎豆を、今回の実験に使いました。
焙煎豆は、手挽きミルのタイムモアのG1Sで調節ダイヤルを15クリック目にセットして挽き、細挽きにして使用しました。
カミラでエスプレッソを抽出してクレマを比較 (ロブスタ種 vs 雲南コーヒー)
抽出中の様子
上の写真はカミラでの抽出終盤の様子で、左がロブスタ種で右が雲南コーヒーです。(フィルターホルダーはダブルを使用しています)
見てわかりますように、抽出中のロブスタ種のクレマの高さは普段飲んでるアラビカ種の雲南コーヒーのクレマよりもかなり高かったです。
抽出時の圧力はロブスタ種がMax3.2気圧、雲南コーヒーがMax3.8気圧で、雲南コーヒーの方が少し高めでした。
抽出直後の様子
上の写真は抽出直後の様子で (抽出終了から30秒ほどたったところ)、先の写真と同様に左がロブスタ種で右が雲南コーヒーです。
写真のオレンジ色の斜線の部分は抽出末期の水蒸気由来の大きい泡が混入した部分なので、今回は炭酸ガス由来のクレマとは区別し、この部分は比較には考慮しません。
写真映えを気にするのであればこの大きい泡が出る前に抽出を止めるところですが、見極めが難しいため、今回はこの大きい泡が出始めたところで抽出を終了しました。
比べてみると、抽出後のクレマの高さはロブスタ種と雲南コーヒーアラビカ種とでは大差無く、クレマ表面の光沢も雲南コーヒーの方が強い感じがします。
雲南コーヒーの方が光沢が強いということは、雲南コーヒーの方が泡のサイズが細かいのかもしれません。
抽出終了から3分後の様子
上の写真は抽出終了からの3分経過後の様子で、先の写真と同様に左がロブスタ種で右が雲南コーヒーです。
比べてみると、やはりクレマ表面の光沢はロブスタ種よりも雲南コーヒーの方が強い感じがしますし、残ってるクレマの量も雲南コーヒーの方が多いです。
泡は細かい方が安定性が大きいので、やはり雲南コーヒーの方がクレマの泡のサイズが細かいということでしょう。(抽出圧力がロブスタ種 (Max3.2気圧) よりもやや高め (Max3.8気圧) だったからかもしれません...)
結論
以上、見てきましたように、抽出後クレマの高さや持続時間で比較すると、今回の結果からマキネッタでロブスタ種を使用してもクレマがつくり易いとは言えませんでした。(印象としては抽出条件を多少検討しても、それほどアラビカ種に対して有利になるとは思えません...)
機械式のエスプレッソとは抽出条件が異なるので (マキネッタの方が条件がマイルド)、ロブスタ種の方は泡の安定化に寄与する成分の抽出が機械式に比べたら不十分だったのかもしれません。(おそらくは抽出速度が遅い高分子量成分が泡の安定化に寄与していると考えています)
また、先に挙げた文献ではロブスタ種のクレマの泡が安定な理由として、オイル分の少なさも挙げられていますが、今回の抽出条件ではそれほど有効ではなかったようです。
また、今回カミラで抽出した100%ロブスタ種のエスプレッソを飲んでみると、パンチのある苦味はそれほど感じられなかったので、残りはハンドドリップのブレンド用に調味料代わりに使用しようかと思います。
これは不思議でカミラで抽出した100%ロブスタは、結構、普通にブラックでも飲めてしまい、それほど特徴的な味には感じられませんでした。(ちょっとお湯で希釈しましたが...)
しかし、ハンドドリップで淹れた100%ロブスタは超~苦くて、砂糖無しでは飲めませんでした。(しかも、苦味の種類がアラビカ種の深煎りとも異なる感じで強烈...)
これは意外でした...やはり抽出方法でコーヒーの味は結構変わってしまいますね...
手鍋のお自宅焙煎の方も片かげで出来具合が安定してきたので、今後もう少し異なった抽出方法も試してみるつもりです。
自分としては、今回の実験で疑問が一つ晴れたので満足です!(まさしく自己満足です)
以上、ご覧いただき、ありがとうございました。
下記は本記事の続編で、ナチュラル式のロブスタを使ってクレマの出方を確認してみました。(本記事では水洗式のロブスタを使っています)
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