2018年から中国の現地企業に技術者として勤務しています。(広東省在住)
今回は、2018年に中国の就労ビザ (Zビザ) を実際に取得した経験を元に、下記のように2017年から始まった中国の新制度での就労ビザの取得手順と、外国人労働者のランク分けの目安を紹介します。
2017年4月1日より、外国人就労規制強化の新制度の引用が始まり、外国人就労者をハイレベル人材(A類)、専門人材(B類)、一般人員(C類)に分類し、ビザの発行のためには職務経験、中国語能力、学歴等のポイントを満たすことが義務化されました。
※追記:2020年5月現在、申請方法や必要書類の変更はありません。(パスポートの更新手続きの際に確認しました)
※追記:2020年7月27日現在、中国への外国人の入国が制限されています。関連情報にご注意下さい。
▼参考
※追記:2020年7月27日現在、中国駐日本大使館の通知により、2020年8月1日から中国ビザの申請にはオンライン申請とオンライン予約が必要となります。
8月1日~31日までは移行期間で従来の申請書も受け付けるようですが、9月1日からは完全にオンラインに移行するようです。
▼関連情報にご注意下さい。
- 中国の就労ビザ (Zビザ) の申請に必要な資料は4つ
- 外国人工作許可通知は準備に時間がかかる
- 外国人工作許可通知の申請に必要な資料
- 外国人工作許可通知の申請
- 外国人労働者のランク分け (A類、B類) の実際の目安
- 就労ビザの申請手続きで誤解しやすい点
中国の就労ビザ (Zビザ) の申請に必要な資料は4つ
まずは中国の就労ビザ (Zビザ) の申請に必要な資料と手続きを下記にまとめます。
資料の準備にはかなり時間を取られるので、予め申請の流れを把握して、手が付けられるところから準備を始めた方がよいですね。
中国のZビザの取得に必要なものは下記の4点の資料で、日本側でこれらの資料を中国ビザ申請センターに提出し、Zビザの発行を申請する必要があります。
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中国査証 (ビザ) 申請表
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パスポート (※)
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証明写真
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外国人工作許可通知 (外国人就業許可通知)
資料の提出後、問題がなければ4営業日ほどでビザは取得できます!(通常費用は8,400円でしたが、割増金を支払えば納期短縮も可能でした)
外国人工作許可通知は準備に時間がかかる
中国の就労ビザ(Zビザ) の申請に必要な資料 (下記の1~4) について、もう少し詳しく説明します。
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中国査証 (ビザ) 申請表 (中国ビザ申請センターからダウンロード可能)
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パスポート (有効期限が6ヶ月以上あること)
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証明写真 (指定規格有り、要確認)
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外国人工作許可通知 (最も重要で発行に手間がかかる)
1,2の資料の準備は特に難しくないです。
3の証明写真に関しては独自の指定規格がありますので、必要な方は各自で確認してください。
ちなみに私は下記リンク先のカメラのキタムラで証明写真を作成しました。
カメラのキタムラでは中国の指定規格は把握しているので、詳しい説明の手間は省けました。
上のリンク先は渋谷店となっていますが、他の店舗でも中国ビザの写真規格は共有されています。(リンクが切れやすいので、切れていたらカメラのキタムラで検索して下さい)
後述の外国人工作許可通知を申請する際に、写真の電子ファイルも必要になりますので、同時に作成した方が都合がよいです。
4の “外国人工作許可通知” ですが、これが最も重要かつ取得が面倒な資料です。
これは中国側で発行してもらう必要があり、外国人来华工作管理服务系统に発行を申請する必要があります。(Webでの手続きになります)
2018年4月現在、外国人工作許可通知の申請に必要な資料は下記の通りで、基本的に中国語での資料作成のため、受け入れ先の企業に準備・協力してもらうことになります。
外国人工作許可通知の申請に必要な資料
外国人工作許可通知の申請に必要な資料は1~10になります。(初めての申請の場合)
- 外国人工作許可通知の申請書 (中国語)
- パスポートのコピー
- 職歴証明書 (中国語翻訳が必要)
- 学位証明書 (外務省の公印確認→中国大使館の認証→現地で中国語翻訳)
- 犯罪経歴証明書 (外務省の公印確認→中国大使館の認証→現地で中国語翻訳)
- 関連資格の証明書と翻訳
- 最近6か月以内の健康診断書 (所定の書式有り)
- 雇用契約書(中国語)
- 写真 (所定のJPG形式の電子ファイル)
- 補足資料 (必要があれば)
特に準備に手間のかかるのが、学位証明書、犯罪経歴証明書、健康診断書です。
補足資料に関しては、HSKの証明書を提出しました。(HSKとは? | HSK 公式サイト)
以下で、それぞれについて説明します。
学位証明書
まず学位証明書についてですが、これは卒業した学校から入手して下さい。(中国語表記があればベストだと思いますが、日本語でOKです。また英語表記でも中国語表記の代用にはならず、現地で翻訳を求められます)
入手した学位証明書は開封せずに外務省に持っていき、公印確認を申請します。(申請日の翌日には公印確認は完了します)
下記リンク先に外務省の公印確認に関する説明や手続きが記載されています。必要な方は各自でご確認下さい。
外務省で公印確認してもらった学位証明書を、次に中国ビザ申請センターに提出し、中国大使館の認証をもらいます。
外務省は無料ですが、中国の認証は有料で、1通につき8780円が必要です。( 急ぐ場合は更に割増料金が必要ですが、通常申請で3日後には認証は完了します )
私の場合は大学と大学院の計2通を申請したので、費用は計17560円( =8780円×2 )でした。
中国ビザ申請センターのHPでは予約ができるようなシステムになっていますが、予約しても全く無意味で、オフィスで並んで申請を待つしかなかったです。( 東京オフィスの場合 )
上記の手続きは、地方在住の場合、かなり面倒だと思いますが、代行業者による申請や受け取りも可能です。( もちろん家族や知人でもOKです )
なお、代行業者に依頼する場合の費用は、上記の申請費用に加えて代行費用が1通につき約10000円ほど必要です。( 私の調べた限りでは )
私は代行業者に依頼することも検討しましたが、結局、自分で手続きしました。(後で説明する犯罪経歴証明も含めて計3通の認証が必要で、代行業者に依頼すると3万円ほど費用が余計にかかるので止めました)
自分で手続きする場合は、外務省で公印確認が完了した学位証明書を、そのまま中国ビザ申請センターに持ち込んで認証申請できるようなスケジュールを組むと、多少は時間が節約できるかもしれません。
犯罪経歴証明書
犯罪経歴証明書に関しては発行してもらえる警察署が限られていて、自分の住んでいる地区の県警本部のみでの発行になると思います。
また、犯罪経歴証明書に関しては本人による申請が必要ですが、受け取りに関しては代理でもOKでした。( 申請の際に指紋を登録させられますので、本人が直接発行先に出向いての申請が必要です )
学位証明書と同様に外務省の公印確認や中国大使館の認証が必要になりますが、こちらの手続きも代行業業者への委託が可能です。
参考までに下のリンク先には、神奈川県在住の場合の犯罪経歴証明書の申請方法が記載されています。
ちなみに犯罪経歴証明書の申請には外国機関から発行された書類 ( 申請の理由となるようなもの ) が必要になりますが、私の場合は就職予定企業の採用通知のコピーを使用しました。
健康診断書
中国へ渡航前の健康診断については下記の記事にまとめたので、ここでは割愛します。
補足資料 (HSKの証明書)
申請サポートの会社の方から、中国語や英語の能力がわかる証明書があれば提出した方がいいと伝えられたので、HSKの証明書を提出しました。(HSKとは? | HSK 公式サイト)
提出は義務ではありませんが、もし外国人労働者のランク分けの際にポイント計算が実施される可能性がある場合は、HSKは加点になるのであった方がいいです。(ポイント計算に関しては本記事の追記で説明しています)
ただし、中国語の能力に対する配点は120点満点中の5点しかありません... (HSK5級で満点の5点、HSK3級であれば3点です)
ポイント計算実施の可能性があるのはB類のボーダー付近の方や60歳以上の方などですが、その実施基準は都市によって異なると思いますので、内定先の企業や申請サポート会社に相談して下さい。(ざっくりとは自分でポイント表で計算すればわかると思います)
私は中国企業に入社を決めるまで中国語の勉強をしたことはありませんでしたが、下記のスマホの中国語勉強アプリ “HelloChinese" で2ヵ月ほど勉強し、HSK3級を取得しました。(とくにこの申請関係のためというよりも、入社後のことを考えてですが...)
これから中国語の学習を始める方にこのアプリは特におススメなので、興味のある方は下記の記事も参考にして下さい。
以上、これまで説明しましたように、就労ビザの資料集めには思った以上に手間がかかりました。(加えて費用も...)
なお、ビザ更新時にはこれらの面倒な資料は必要無いそうなので、ほっとしました...(そうは言っても、中国なので実際の更新時にどうなっているかわかりませんが…)
以下、追記しました。('18 7/13)
外国人工作許可通知の申請
外国人工作許可通知の取得のため、上記の資料を揃えた上でスキャンして電子ファイルにし、外国人来华工作管理服务系统 (Service system for foreigners working in China)にWebサイトからオンライン申請します。
外国人工作許可通知の取得までの必要期間の目安は下記の通りです。(現地の申請サポート会社に直近の状況 (2018年6月現在)を聴取しました)
- 受け入れ企業の上記サイトへの登録:1~2営業日 (登録済であれば省ける)
- 予備審査:5営業日 (ここで、A類/B類などに分類される)
- 本審査:A類の場合は2~5営業日、B類の場合は7~10営業日
外国人工作許可通知は電子ファイルでもらいます。(中文と英文)
日本でZビザ申請の際、中文と英文共にプリントアウトして提出しました。
外国人労働者のランク分け (A類、B類) の実際の目安
就労ビザに関しては新制度になり、ポイント (点数) 計算による外国人労働者のランク分け (A類、B類、C類) も始まりました。
下記の表がポイント計算の要素の和訳です。(原本: “外国人来华工作分类标准 (试行) ”)
Webには古いポイント表をまだ掲載しているサイトもありますが、古いポイント表は新しい就労許可制度の運用前に暫定的に発行されたもので、2017年からの実際の運用時に改訂されています。
改定の簡単な見分け方は、例えば中国語レベルに関する配点で改定前は最大10点ですが、改定後は最大5点に変わっていますのでご注意ください。
参考のため、現地の申請サポート会社から、現状のA類、B類の典型的な例を聴取しました。(あくまで目安です。下記の項目は必須ということではありません)
現状、深センではA類は所得による選別がほとんどのようで (平均所得の6倍以上)、
ポイント計算でA類に選別されることは少ないようです。
つまり、所得が6倍に満たない普通の会社勤務の外国人就労者は多くのケースがB類のようです。
また、下記はあくまで外国人労働者のランク分けの目安であって、受け入れ先の企業・機関が外国人労働者の採用に当たって重視する事柄とは必ずしも一致しません。
就労希望者にとって、まずは受け入れ先の内定をもらうことが一番重要です。
内定をもらってしまえば、受け入れ先もしくは委託された申請サポート会社が内定者のビザ申請書類に関してはいろいろとサポートしてくれるはずです。(受け入れ先は、少なくとも就労ビザが取得できそう人に内定を出しているとも考えられます)
<A類>
- 所得 (最重要)
- 大学院卒業以上 (修士以上の学位、職務と専攻は関係なくてOK、学歴が重要)
- 10年以上の職歴
- これまでの職歴と中国での職務がマッチしている (例えば、それまで研究開発でキャリアを積み、中国でも研究開発の職務につくなど)
<B類>
- 大学卒業以上 (職務と専攻は関係なくてもOK、学歴が重要、かといって高卒がNGという訳ではありません)
- 2年以上の職歴 (これまでの職歴と中国での職務が一見して異なっている場合でも、外国人工作許可通知の申請の際には自身の経験や知識がいかに中国での職務に生かせるかわかるような記載が好ましいです。この辺の記載方法は内定先や申請サポート会社が詳しいはずです)
- 60歳未満
上記のようなケースに明らかに適合する場合、ポイント (点数) 計算をしていないそうです。(ぶっちゃけ最も重要なのは所得 ( = 収める税金が高い ) と学歴だそうです)
※60歳以上や高卒といった理由で必ずしも審査に通らないということではありません。(個々のケースによるそうです)
また、申請者にとってのA類のメリットは外国人工作許可通知/外国人工作許可証の審査期間が短いことと、次回のビザ更新時には有効期限が2~5年程度の長期にできるでしょうとのことでした。(なおB類でも2年目以降から長期は可能とのことです。年数はケースバイケースのようです。)
ただし、審査期間が短くても、実際に大変なのは書類収集なので、あまりメリットはありません。
さらに、ビザの有効期限が長期にできるとしても、更新時の手続きは簡略化されているそうなので、毎年更新してもそれほど手間ではないようです。(最初のビザ申請時が一番大変)
そのため、A類のメリットは申請者にとって、大したものではないようです...
就労ビザの申請手続きで誤解しやすい点
A類であれば犯罪経歴証明書が不要?
中国の就労許可制度に関し、外国人労働者の分類を示した通知 “外国人来华工作分类标准 (试行) ” には、A類であれば犯罪経歴証明書 (無犯罪証明書)が不要とあります。
しかし、そのランクを判定する予備審査の段階で犯罪経歴証明書を要求する都市もあり、その場合は準備しなければなりません。(企業の在る都市によって異なり、深セン市は要求してきました)
ランク分け時のポイント (点数) 計算
自分でポイントを予め確認したい方もいると思いますが、ポイントの項目や配点に関しては、必ず改訂された新しいポイント表で確認してください。
上記 (本記事) にもポイント表 (和訳済み) は掲載しています。
ビザ申請のサポート (代行) 会社
日本にも中国の就労ビザの申請代行を謳っている会社がありますが、多くは日本での書類手続きだけを代行してくれる会社です。(中国ビザ申請センターへの書類提出や外務省での公印確認など日本国内で完結する手続き。これは手間をかければ誰でもできるので、私は自分でやりました)
日本側だけの代行の場合、中国側での申請のサポートは得られませんので、日本で申請サポート会社を探す場合はその点を注意してください。(中国側での申請の方が厄介です)
就労ビザ (Zビザ) の有効期間
中国の就労ビザの有効期間は発行から3ヵ月であり、3ヵ月以内に中国に入国すれば、入国日から30日間滞在可能です。
その30日間の間に工作許可証と居留許可証を申請しますが、どちらか一方ずつしか申請できないので、順番に申請します。(サポート会社によると、通常は工作許可証から申請するそうで、私はそれに従いました)
30日の期間内にこれらの申請だけ完了していればよく、許可証を受け取るのは30日を過ぎてしまっても問題ありません。(その間の滞在も問題ありません。申請の際にパスポートを提出しているので、出国もできませんが...)
工作許可証の有効期限は通常1年間で、居留許可証もこれに合わせる形になります。(工作許可証がAランクであっても、深セン市の場合は初回1年間だそうです)
ちなみに下記はやっと手に入れた私の就労ビザ (パスートの空いてるページにシールで貼られます) の写真ですが、最初に中国に入国した際にイミグレですぐにペンで斜線を引かれてしまいます。(ちょっとショックです...)
さらに居留許可証を取得すると、" CANCELLED " の赤いハンコが押されて帰ってきます。 (これで就労ビザの役目は終了です)
以上です。ご覧いただき、ありがとうございました!
追記('18 9/6)
外国人労働者のランク分けに関して、青島市の具体的な例がJETROのHPに掲載されていました。やはり所得が高ければ学歴によらず、それだけでA類に分類されることもあります。(興味のある方は、下記のリンク先をご参照ください)
青島市、外国人就労許可で所得基準による分類を開始-一部の人材は65歳までの延長申請が可能に- | ビジネス短信 - ジェトロ
また、参考までに下記の二つの記事では、①外国人工作許可通知の審査の際、加点される日本の大学の調査結果、②就労ビザ (Zビザ) 取得後に中国に入国してからの手続き、③健康診断書と予防接種に関する内容を、それぞれにまとめています。
ご興味ある方は、こちらも是非ご覧ください!
①外国人工作許可通知の審査の際、加点される日本の大学の調査結果
②就労ビザ(Zビザ)取得後、中国に入国してからの手続き
③中国へ渡航前の健康診断書と予防接種について
また中国ではVPNによるネットワーク接続が必須になると思います。もしまだ準備されていないようでしたら、下記の記事もご覧下さい。(時間に余裕のある内のご準備をおススメします)