1Zpresso コーヒーグラインダー JE-plus
今回は台湾メーカーである1Zpressoのコーヒーミル "JE-plus" を紹介します。
1Zpressoに対しては以前から興味があり、既に所有しているTimemore (タイムモア) のCやG1Sとの比較も交えます。
この "JE-plus" というモデルは日本で販売されていないのでご存知の方も少ないと思いますが、1Zpressoのコーヒーミル製品として参考になる部分もあるかと思います。
ちなみに1Zpressoの製品は以前に手動エスプレッソメーカーを下記のように紹介したことがあるのですが、1Zpressoとしてはコーヒーミル (コーヒーグラインダー) の方が主力の会社です。
1ZpressoにおけるJE-plusのラインナップ中の位置づけ
まず1Zpressoのラインナップはかなり多く、現在購入可能なものは下のようになります。表中の製品以外に、下に挙げたEproとZproという製品もあります。(海外のZproは日本向けのものと刃が異なります。また、Q2にも日本向けのものと刃の異るバージョンが存在します)
タオバオの1Zpresso旗艦店から引用
タオバオの1Zpresso旗艦店から引用
以上が1Zpressoのコーヒーミルの現在のラインナップで、JE-plusはエスプレッソ向けのモデルになっています。
エスプレッソ向けって何なの?と思われるかもしれませんが、個人的には下記が大前提だと思います。
極細で挽けて、かつ実用的な速さでできること
JE-plusの場合は上記に加えて挽き目調整が非常に細かい間隔で設定でき、粉受けも底が抜くことができて充填し易くなっています。(抜けない普通の底にもできますが...)
個人的には1Zpressoの精巧そうな造りに一番魅かれたのですが、個人的には既にタイムモアのミル (G1SとC) も持っています。
しかし日常的に使ってみたかったので、これらとできるだけ用途がダブらないようなモデルを選びました。(例えば、G1Sの極細挽きは楽とは言えないので、その改善を期待...)
スペックからみるG1SとCとの主な相違は下記のようになります。
- 粒度調整の設定刻みが細かい :タイムモアG1SとCが約24段階に対して、JE-plusが約240段階と10倍細かい間隔で設定可能 (実際に効果を感じるかは別の話)
- 刃が大型 :JE-plusの刃の外径は47mm、タイムモアは38mm (G1SとC共に)。
- 全体サイズも大型 :JE-plus (重量約850g)、G1S (重量約560g) 、C (重量約430g)
下はメーカーのJE-plusの紹介動画です。(約1分30秒)
1Zpresso-1Z-JEplus-義大利進口六芯大刀盤三軸承上調式手搖磨豆機
JE-plusのデザイン|金属中心の精巧なデザインで高い質感
JE-plusのデザインですが、上の写真のように金属が中心で非常に質感が高いです。
反面、重量は850gほどあるので、ズッシリときますが...
サイズもタイムモアのG1よりも一回り大型です。
この辺のデザインに魅かれる人も多いのではないでしょうか?
好みもあると思いますが、所有感は高いと思います。
挽いた感想
次はミルにとって肝心な豆を挽いた感触です。
タイムモアのG1SやCと比較してみます。(豆はすべて雲南の中深煎りを使用)
本当は興味ある人が自分で挽いて比べられるのが一番なのですが...
ハンドドリップ向け
ハンドドリップ向けですが、挽き目の設定はクレバードリッパー向けにそれぞれ調整しました。(抽出温度もそれぞれ変えて、好みの挽き目を探しました。結構粗目に行き付きました...)
- JE-plus :62クリック
- タイムモアC :27クリック
実は意外に二つのミルで豆を挽いた感触にあまり違いを感じませんでしたが、JE-plusの方が安定感というか若干ゆとりがあるように感じます... (浅煎りとかであればもっと差が感じられるかもしれませんが...)
JE-plusのハンドルは持ち易く、回転半径が長い (てこの原理で長い方が力が少なくて済みます) のも挽いた感触に影響していると思います。
時間で測ってみても、JE-plusの方が数秒早いかどうかです。(15g挽いて)
上の写真は実際に挽いた豆です。
これ見ても自分にはどう判断してよいのかわからないのですが、JE-plusの方にはもわもわっとした細かい粒子があるようにも見えます。(微粉というべきか...)
これが原因なのかは定かではありませんが、実際に淹れたコーヒーの風味は明らかに異なります。
その風味はJE-plusの方がマイルドでズッシリとした風味で香りもやや強め、淹れたコーヒーの自分の好みとしてはJE-plusです。
これはクレバードリッパーでの感想で、温度はJE-plusの方を少し下げて淹れています。(主観や諸条件によっても風味の感じ方は異なると思いますが…)
タイムモアCの方は比較的にスッキリとした風味で、明らかにJE-plusとの違いは感じられます。(タイムモアG1Sでも挽き目が27クリック付近で確認しましたが、薄く苦味が強く出る傾向でJE-plusのようなまろやかな感じになりませんでした...)
ただし、ウェーブドリッパーで淹れるとJE-plusの方が非常に苦く感じたりして、淹れ方にも依存するようです。(タイムモアCの方があっさり目に仕上げやすい気がします...)
というような感じで、単にミルの挽き目調整だけでは辿り着かない風味の違いが、ミルを変えることで得られるということが今回実感できました。
ドリップは苦手だったのであまり深入りしていませんでしたが、これは自分にとって大きな収穫でした。
同じコーヒー豆で淹れても他の人とは全然違う味を感じている可能性もありますね... (それぐらい違いを感じました...)
なお、タイムモアCとJE-plusの挽き豆の粒度分布の違いについては、下記の記事でもう少し詳しく検証しました。
直火式エスプレッソ (Kamira) 向け
カミラ (Kamira) は下の動画のような直火式のエスプレッソメーカーです。
カミラ|直火式エスプレッソメーカーでもなめらかクレマが出る!/ Getting creamy crema with Kamira stovetop espresso maker !
カミラ向けは、ゲージ圧 (内圧) が1bar程度で抽出開始 (滴下開始) するようにそれぞれ調整しました。(共にエスプレッソ挽きの領域には入っていません)
- JE-plus :37クリック
- タイムモアG1S :14クリック
普通にミルを立てて挽くとG1Sの方が重く感じるので、適度にハンドルが軽くなるようにG1Sの方はミルを傾けて臼刃に噛み込む豆の量を調節しています。(その分挽ける速度は遅くなりますが...)
そうすると、G1Sで65~75秒で挽けるところが、JE-plusでは55~65秒で挽けました。(挽いた豆の量は各16.5g)
個人的な感想としては期待したほどの差がなく、少しがっかりです。
JE-plusの方はハンドルが軽い反面、臼刃に噛み込んでいく豆の量がコントロールされている感じです... (どちらかというと、この感触はCの方に似ています)
一方、G1Sの方は挽こうと思えばミルを立ててもう少し速く挽けます。(ハンドルが重いですが...)
挽いた豆は下の写真のようになります。
見た目ではあまり変わらないと思いますが、ホルダーに充填するとJE-plusの方が体積が大きく密度が低く違いがわかります。
また、カミラの内圧の上昇の仕方もJE-plusの方が緩やかで、Maxの内圧もJE-plusの方が低めになります。(抽出時間もJE-plusの方が短くなります...)
さらにアメリカーノにして飲んでいて気付いたのですが、JE-plusの方が粉漏れ量が多いです。(下の写真参照。飲み終わりの写真ですみません...)
G1Sは長らく使っていますが粉漏れはほとんどないので、この違いにはすぐに気付きました。
この結果からJE-plusの方がG1Sよりも細かい粒子が多いことが推定できますが、カミラでの抽出圧力はJE-plusの方が低く、粒度を大きくすることも好ましくありません。(さらに抽出圧力が低下するため)
おそらくはJE-plusの方が粒度分布が狭いのだろうと思います。(粉体の密度が低いこともそれを示唆しています...)
風味的にもJE-plusの方が苦みの方が強くでる感じ味になり酸味が薄れますが、おそらくは豆や焙煎度の変更でそれは調節できるでしょう。
ただし、濃厚に抽出することに関してはJE-plusの方が調節が難しいです。(粉漏れを気にしなければできるかも...)
手動式エスプレッソメーカー (1Zpresso Y3)
手動エスプレッソメーカーの1Zpresso Y3での抽出の際も、上記の直火式のカミラと同じような傾向になります。(風味を含めて)
Y3の推奨は挽き目は上記の直火式と同じレベルの細挽きで、極細挽きではないのですが、G1Sの方はさらに細挽きでも粉漏れも少ないです。
ちなみに、極細挽きの方が圧力も高まるのでクレマはより緻密で長持ちし、風味も濃厚になります。
JE-plusしか知らなかったら何も問題を感じなかったかもしれないのですが、挽いた豆を圧力をかける抽出器で使用する場合、G1Sの方が使いやすく感じます。
JE-plusの方は細かく挽いた割に圧力がかからないかなという印象です。(タンピング等のスキルがあればカバーできる可能性はあります...)
一方、G1Sでの極細挽きはJE-plusよりも挽くのがやや疲れますが...
JE-plusの方は購入してから2ヵ月あまりなので使いこなせてないというのもあると思いますが、マキネッタやエスプレッソ向けではあまり良い点を見いだせていません...
現状はJE-plusをハンドドリップ向けで使用するのが気に入っています。
挽き目調整のダイヤルの位置
JE-plusは上部に挽き目調整のダイヤルがあるのも特徴ですので、下部の内側にあるよりは挽き目調整しやすいです。
ただし、現在が何周目なのか目盛りからはわかりません...
そのため、微調整はし易いですが、範囲を大きく変えて使用することに対してはそれほど恩恵はないと思います。(どこかにメモを残したりするか、覚えておくかする必要があります)
JE-plusの分解とメンテナンス
JE-plusを分解するすると、下のようになります。
タイムモアよりもJE-plusの部品点数は多く複雑ですが (同社のZproやKproに比べたらややシンプルですが…)、かなり質感が高いのがわかると思います。
上の写真の左上の粉受けはマグネット脱着式で、ネジって外します。
刃は指が切れるような鋭さは無く、その分耐久性が期待できそうです。(例えば煎りの浅い豆でエスプレッソ挽きなんかは刃への負荷も大きいでしょうから... その分、サクサク感は少し犠牲になっているのでしょう)
頻繁にここまで分解することはないので、多少部品点数が多くても特に面倒と感じるレベルではないですが...
0点調整を几帳面に0に合わせようとすると、時間を取られるかもしれませんが... (私は0に合わせる派ですが...)
分解の様子は下記の動画も参考になります。(中国語のみですが雰囲気はわかると思います)
1zpresso JE plus │ 性價比爆棚好物 一支很值得考慮入手的手磨。
普段の手入れに関しては、ミルの筒の内部は付属のエアブラシでシュポシュポするぐらいしかありません。
下のようにJE-plusは回転シャフトを固定する部分が4本あるのと、スキマが狭いので付属のブラシは入りません...
上の写真の右上はG1Sですが、ブラシで粉を落としたりティッシュでオイル分を拭けたりできるので一番掃除はし易いです。(Cも付属のブラシは入らないです...)
また、豆の投入もG1Sが一番投入しやすいです。(JE-plusは少し工夫が必要です...)
また、挽いた直後の粉受け側の刃の周りの汚れ方に関しては、JE-plusが一番粉が付着しています。(粒度によらず)
下の左側がJE-plusで細挽き、右側が中挽きにした直後の写真です。
当然、粉受けを付けた状態でミルを叩いて落とすわけですが、結構こびり付いているのでなかなか取れないのと、底が外れる粉受けにしている場合は強く叩くと底が抜ける懸念があります。(経験済み)
ここは人によってはストレスに感じるかもしれません...
使っていると少しマシになりましたが... (多分見えない微粉やオイルで粉が付着し難くなるのだと思います...)
タオバオの製品レビューをみても粉の付着は1Zpressoの製品は多いようで、"静電王" なんていうコメントもあります...
粉受け部分の粉の付着具合はG1SやCと大差無しです。
そのため、メンテナンスに関してはJE-plusが一番手間がかかりますが、淹れられるコーヒーの風味や挽き味の方が優先順位が高いので、この部分は気にはなりますがとりあえず許容範囲なレベルです... (ただやはり気になっているので、使い勝手の良いタイムモアCを使用した淹れ方も継続して検討中です)
まとめ
1ZpressoのJE-plusを使ってみて、ミルのレビューは難しいなとかなり感じました。
とりあえずいい所だけアピールするのは簡単なのですが、今まで使っているミルとの比較となるとどうやって伝えればいいのか...
挽き目を比較しても見た目なんて大して違いはありませんし...
一方、ミルが異なれば挽いた粉も異なり、それぞれに個性があり風味にも影響しますので、単純にスペックでは片付けられない面も大きいです。(感じ方も人それぞれだと思いますので...)
加えて圧力が掛けやすいかどうかといった抽出条件にも影響しますが、これは調節目盛りの間隔の狭さだけでカバーできるものでもありません。(実際に使ってみれば実感しやすいのですが...)
確実に言えるのはタイムモアのG1SよりもJE-plusの方が極細挽きでハンドルが軽く、Cよりも極細挽きで大幅に挽けるのが速いということですね。
ただし、細挽き、極細挽きの使い勝手としてはG1Sの方がよく、こちらはG1Sを継続して使用しています。
一方、ハンドドリップですが、いくつかドリッパーを試してみてJE-plusとクレバーコーヒードリッパーとの相性がよいと感じていて、しかも風味が好みです。
ドリップはもっぱらこの組み合わせで飲むことが多くなりました。
この組み合わせは香りも味もしっかりでるイメージで、しかも味は苦いというよりまろやか...
まさに豆を挽いてお湯を入れるだけで、かなり好みの仕上がりです。
もしかしたらドリップでも浅煎りだったらタイムモアCの方がいいのかもしれませんが、私の頻度的には稀です。
したがって、現在、タイムモアCの出番が激減しています。(追々、豆の種類が変わったり、何かの気付きがあれば変わるかもしれませんが...)
ちなみにCの価格は中国現地でJE-plusの4分の1しかありません... (これをどう考慮すべきか...難しいところです...)
性能バランスはいいので、これだけで色々使い回したい人には向いているかもしれませんが、複数のミルを持っている場合は組み合わせに依存すると思います。
個人的に普段使いの際にネックになっているのは、やはり重さやメンテナンス性 (微粉の付着や分解清掃の煩雑さ) が良くない点です。(メインには使いづらいです)
品質や極細挽きの精度は素晴らしいので、各自が何を重要視するかで評価は変わると思います。
というわけで、今回はこの辺で終わりにしたいと思いますが、ミルを変えると味にも大きく影響するというのが今回の一番の気付きです。
機会があれば、是非いろいろなミルで味を確かめてみて下さい!
単純に粗挽き~極細挽きといった表現では片付けられない発見があると思います!
なお、現状、JE-plusなどの日本で未発売の製品に関し、1Zpresso - 海外公式サイトからの購入ができないようです。(発送先に日本が含まれていないため)
しかしながら、AliExpressなどの通販でも入手可能ですので、参考までにAliExpressの公式サイトへのリンクを貼っておきます。(Q2、Zproも国内よりも安く入手可能ですが、刃の形状が異なる仕様もありますので、国内版と同じ仕様のものが欲しい場合はご注意下さい)
JA.AliExpress | aliexpress Japan - AliExpress
▼1Zpressoの国内モデル (Zpro、Q2) はAmazonでも確認できます。
1Zpresso コーヒーグラインダー Zpro | Amazonでチェックする
1Zpresso コーヒーグラインダー Q2|Amazonでチェックする
以上、ご覧いただき、ありがとうございました!
下記は本ブログのコーヒーミル関連の記事です。(比較的読まれている方から抜粋)
よろしければどうぞ!
下記の記事では自分なりの手動コーヒーミルの使い方を紹介しています。タイムモアのSタイプも普通に構えるとハンドルが重いですが、本体を傾けて使用するとスムーズに挽けます。(Sタイプは刃に噛み込まれる豆の量が過剰になりがちで、ハンドルが重くなる傾向がありますので...)
下記は現在お気に入りのコーヒーミル、Timemore (タイムモア) のG1についての紹介記事です。G1は同社のフラッグシップモデルに相当します。(個人的には現在は刃をSタイプに変更して使用しています)
下記の記事はタイムモアのミルのエントリーモデル、タイムモアCについての記事です。ハンドドリップ用に使っていましたが、新たに1ZpressoのJE-plusも加わったので、使用頻度が減っています... (使い勝手というより風味に対する好みの影響です...) しかし、JE-plusの価格は中国現地でCの4倍になります。コスパに優れたエントリーモデルとしてのCのポジションに変わりありません。
下記の記事では、タイムモアCとJE-plusの挽き豆の粒度分布の違いについて、もう少し詳しく検証しました。