エンジニアの中国ブログ

中国の広東省在住、現地企業勤務のエンジニアです。中国生活で体験したことや趣味の話を中心に発信していきます!

チロリアンシューズのあれこれ|安藤製靴のケベックver.の紹介や最近の検索動向など...

今回は久々に革靴をテーマにしたいと思います。

革靴といってもスーツに合うような革靴ではなくラフに履ける革靴で、チロリアンシューズと呼ばれる下の写真のようなアウトドアシューズです。

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安藤製靴 OR1

 

見ての通り、チロリアンシューズは上の写真のようにぼってりとした感じでスマートではありません。

若いときはおっさん臭い印象が強くて興味なかったのですが、なぜか30代半ばの頃から不思議と魅かれるようになってしまいました。

 

以前に下記の記事でも上の写真のチロリアンシューズを紹介しています。

安藤製靴|登山靴にルーツをもつ堅牢な革靴の紹介 - エンジニアの中国ブログ

ただし、最近は中国の広東省に在住のため暑苦しくてあまり履いていなかったのですが... (広東省は沖縄と同じぐらいの緯度なので、2月でも暑ければ25℃以上になります)

 

そんなわけだったのですが、先月、日本に帰国中にチロリアンシューズを履いていたところ、なんだかまた日常的にそれを履きたい気持ちが湧いてきました...

そして中国に戻る際、中国に持ってきていなかったもう一足の別のチロリアンシューズも勢いで日本から持って来て来ることに!

今回はその紹介がてら、チロリアンシューズについて最近調べたことをまとめたいと思います。

 

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安藤製靴のチロリアンシューズ(ケベックレザー)

安藤製靴製チロリアンシューズ OR-1

上の写真のチロリアンシューズが新しく持って来たものですが、簡単にいうと以前から持ってきていた日本の安藤製靴製のチロリアンシューズの革違い、色違いです。

似たような靴を何足も持っていてバカみたいと思われるかもしれませんが、そこはスルーで...

 

革がイタリアのベスタ社のケベックに変更されていて、色はボルドーです。(黒い方の革はアメリカのホーウィン社のクロムエクセル)

革質はケベックの方がクロムエクセルよりも腰があり伸び難い印象で光沢は抑えめです。(しっとりしていて傷も付き難い感じ...)

私としては黒はクロムエクセルの光沢が、茶系はケベックのややマット調が好みです。

ベスタ社 (公式サイト)

Chromexcel® — Horween Leather Co. (ホーウィン社の公式サイト)

 

3年ぐらい前に購入してからまだあまり履きこんでいないですが、茶系の色なのでこれから経年変化でいい風合いが出てくるのを期待しています。(黒は経年変化があまり楽しめないので...)

二つを並べると下の写真のような感じです。

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安藤製靴のチロリアンシューズ (茶色がケベック、黒色がクロムエクセル)


黒い方は10年近く前に購入したものですが、まだまだ履けそうです。

ちなみに安藤製靴の靴の特徴としては革質縫製の丁寧さ、甲と底を結び付けている細革のウェルト構造なんかで、もっとシンプルなチロリアンシューズも昔はラインナップにありましたが、おそらく人気もあまりなく、既にラインナップから消えています。

ちなみに下の写真の靴のことです。(上のOR1と違いがわかりますか? 構造的にもシンプルで防水性も高いのですが...)

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引用:安藤製靴ホームページ http://www.ando-shoe.com/pulse1/105.ht_

 

チロリアンシューズのデザインそのものは安藤製靴のオリジナルではなく、様々なメーカーが作っていて、簡単に一般的な構造の特徴をまとめると下記のようになります。

  • 甲の部分のモカシン縫い (粗目のステッチワーク)
  • 2穴3穴のレースアップ
  • ノルウィージャン製法ステッチダウン製法といった革製の登山靴に用いられていた製靴方法で作られていることが多い

 

デザインのルーツとしては、アルプスのチロル地方のような傾斜のある土地で働く牧童たちが履いていた伝統的なチロリアンブーツが原型と言われてます。(調べてもなかなか出てこないので見たことないのですが...) 

また、ノルウィージャン製法については下記の記事も以前に書きました。

ノルウィージャンとグッドイヤーウェルト製法の違い|安藤製靴の製法について調べてみた - エンジニアの中国ブログ

 

履くときの注意点

こういった靴を履くときの注意点を二つ挙げておきたいと思います。

まず一つ目ですが、踵が抜けやすいことが挙げられます。

靴紐が甲の上部しかないので、構造上、足のホールドは高くないです。

国産の登山靴を作っているメーカーにありがちのようですが、履き始めは底が固くて返り難いです。(特にOR1は特徴の一つであるウェルトの影響もありそう...細革のウェルトがないホットスタッフなんかは最初から底の返りが良好だったので...)

 

一応、安藤製靴の靴も下の写真のように最初から底の返しは形状的に付いているのですが、それでも履き始めは踵が抜け易かったです。

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安藤製靴のチロリアンシューズ(真横から)


で、これを解決するために中敷きを入れてみたり、紐をきつく結んでみたりしましたが、あまり効果ありませんでした。(私の黒のチロリアンは最初から貼ってある半敷革を剥がしてみたりと格闘の後が残っています...)

結局、踵抜け対策で一番効果があったのは底を柔らかくすることで、底の返りを意識して多少をクセを付けるような感じでしばらく履いていれば踵抜けは解消されました。(同社のOR2なんかも一緒です)

特に初めてこの類の靴を履く人で踵が抜ける場合、簡単に諦めないで馴染んでくると信じて履くことが重要です。

 

二番目の注意点ですが、縫い目からの浸水です。(靴にもよりますが...)

ノルウィージャン製法の場合は縫い糸も太く縫い穴も大きいため、下の写真でいうと内側の縫い目 (すくい縫いの部分) から浸水し易いです。(目止め処理していなければですが...)

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 安藤製靴のチロリアンシューズ (つま先付近)

登山靴製法による重厚な作りのチロリアン・シューズは防水性に優れており、雪にも強いため、軽登山の普段履きとされています。

チロリアン・シューズとは | 靴の種類や製法、修理に関する用語集

 

上記のように "チロリアンシューズ=防水性が高い" といった感じで記載しているサイトも多いですが、登山靴メーカーが作っていてもチロリアンシューズは登山靴ではないので、防水性が考慮されているかどうかは別の話です。

縫い目の防水性が考慮されていないOR1みたいな靴だと、縫い目にワックスをよく塗り込んでおいた方がいいでしょう。(一度や二度だと効果が薄く、メンテの度にワックスを塗り込んで、ブラシでよく刷り込むようにしていたら、浸水は気にならなくなりました...上のボルドー色のOR1の方はあまりメンテしていないのでたぶん浸水してくると思います...)

 

ケベックの経年変化

というわけで、今後、ケベックレザーのOR1を履き込んでいって、革靴の醍醐味の一つである経年変化 (エイジング) も見てみていくつもりです。(完全に自己満足の世界で、見る人によってはただの汚い靴かもしれませんが...)

その代わりにこれまでスタメンだった下のホットスタッフは会社で履く予定です...

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 安藤製靴のホットスタッフ

 

続いて、この記事を書くにあたり久々にチロリアンシューズについて軽く調べてみたので、それに対して思うことを備忘録も兼ねて書き残します。

 

Googleの検索サジェストをチェック

今、チロリアンシューズに関心を持っている人が特にどんな点に関心を持っているのか知りたいとき、Googleの検索サジェストが一つのヒントになることがあります。

Googleで表示される検索サジェスト (オートコンプリート)は、他の検索ユーザーが興味を持っているキーワードや、過去に検索した回数などに基いて決まるようですが、チロリアンシューズの検索サジェストは下記のようになりました...

 

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・・・

ダサい

・・・

・・・

別に人目なんか気にする方ではないですが、なんなんだよこのキーワードはと...

これに対する答えを用意すればブログのPV上がるんだろうか...

どういうつもりでこんなキーワードで検索しているのでしょうか?

私には履きたい靴を履けとしか言えません...でもサジェストの3番目にあるスーツは止めた方がいい...絶対合わないから...

 

他のファッション系を取り扱っているサイトにも下記のように記載があります...

チロリアンシューズは、ビジネス用の革靴としては一般的に使われることはありません、もちろん冠婚葬祭も避けましょう。カジュアルな場面で活躍する革靴です。 

人気の革靴:チロリアンシューズの魅力と特徴 | ピントル

 

ちなみに「チロリアンシューズ+ダサい」で検索すると、2020年3月4日の時点で下記のような検索結果になります。

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なんと検索結果は1~3位まで、フランスのメーカーであるパラブーツ絡みの記事が独占です。

しかも記事を見てみても内容的にダサいとどう関係あるのかわかりませんでしたが、Googleのアルゴリズム的にはこれが「チロリアンシューズ+ダサい」に対する答えです

パラブーツはお店で試し履きしか経験がないのですが、底が柔らかくて履き易そうでしたが個人的に好みではありません... (特に革の質感が...)

なので、別にパラブーツに興味がある訳でもないので、このキーワードに関しては掘り下げるのは止めました。(この記事が引っかかっるのは避けねば...)

 

チロリアンシューズの国産メーカー

あとはGoogleのサジェストに出ている「国産」、「GU」、「リーガル」、「ゴロー」なんかはチロリアンシューズのメーカーを探していそうです。(パラブーツは出ていない...)

ゴロー含め「国産」キーワードでチロリアンシューズを探している人は日本製の中でも特に登山靴メーカーの作っているものを探しているのではないかと推定しているのですが、その場合、上で述べた靴底の返り (踵抜け) には注意した方がいいと思います。(逆にリーガルやGUは最初から底が柔らかくて履き易そうなイメージ)

 

下記が私が知っている登山靴系の国産メーカーのリンクです。

安藤製靴

登山靴 手作り職人の店 中山製靴

中森商店 - Yosemite ヨセミテ 通販 (ここは独自の公式サイトは持っていないようです)

有限会社 ゴロー

 

この中で安藤製靴以外に靴を購入したことがあるのはゴローで、軽登山靴のブーティーエルを買ったことがあります。(もう10数年前の話ですが...早いな~)

ゴローの靴は実用性重視で機能的には全く問題ないですが、たぶん安藤製靴に興味を持っているような人はここの靴は選ばないのかなと思います。

 

意外だったのは、たまたま見つけた下記の記事。

 

上の記事では女性向けに中森商店のチロリアンシューズを紹介しています。

ここの靴は結構造りがハードに見えるけど、踵抜け大丈夫なんだろうか?(たぶん体重が軽いと底がなかなか柔らかくならないかも...)

実際に今までに女性がチロリアンシューズを履いているのは見たことないような気がしますが...

 
ちなみに検索サジェストですが、前方補完の場合はアンダーバー "_" を付けることで得ることができます

例えば「_チロリアンシューズ」で検索サジェストは下記のようになります。

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前方補完される場合、保管されるキーワードはメーカーやブランド名で、興味のあるメーカーやブランドが既にある人がよく使うキーワードなのかもしれません...

ここでは新たに「クレマン (Kleman)」、「GU」、「ダナー」、「安藤製靴」、「アイガーエイス (中森商店)」が出てきました。

先に紹介した安藤製靴もそれなりに認知されているのだと思います...
 

過去5年間の検索数のトレンド

Google トレンドで過去5年間の検索数のトレンドも調べてみました。

「チロリアンシューズ」の他、「安藤製靴」、「リーガル 靴」も比較として加えています。(下がその結果)

 

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ご覧の通り、リーガルに比べたら10分の1も検索数は無いですが、過去5年間、チロリアンシューズは安定して検索されています

ちなみに「安藤製靴」というキーワードは本ブログで最も表示回数の多いキーワードになるので、チロリアンシューズというキーワードは結構検索されているのではないかという印象です。

ただし、「安藤製靴」というキーワードでは本ブログはあまりクリックされていないです。(本ブログの検索されるキーワードのトップ10にも入らないですね...)

 

というわけで、検索件数やそのトレンドから、チロリアンシューズは意外に安定して人気があるのではないかという印象を持ちました。(Googleのサジェストにいきなりダサいとか出てきたんで、人気が無いのかもとも思いましたが...)

 

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というわけで日本から新しく持ち出してきたケベックレザーのチロリアンシューズをしばらく履きこんでみるつもりです。

いい感じに経年変化 (エイジング) していくことを期待しつつ、折を見て状況をまた紹介していくつもりです。(あまり需要はないかもしれませんが、完全自己満足なので...)

また、チロリアンシューズの底堅い人気 (と言い切っていいかはわかりませんが...) を確認できて安心しました。(当分買い足す予定はないですが、製品自体が無くなっていくと寂しいので)

 

以上、ご覧いただきありがとうございました!

 

 

以降は本ブログの安藤製靴やノルウィージャン製法関連の記事です。よろしければどうぞ!

 

 

安藤製靴|ブログ内記事のまとめ

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安藤製靴についての記事に訪問してくれる方が意外と多いので、これまでの記事を整理してみました。(私のブログで取り扱っている内容の中では、検索需要自体は一番多いかも…)

これらは基本的には安藤製靴にすでに興味がある人を意識して書いた記事で、読む順番の指定は特にありません。(3つ目の分解の記事はかなりマニアックなので後回しでいいかもしれません...)

 

安藤製靴のユーザー、ファンとして、もっと知りたいと思ったことや疑問、それらに対して自分で調べたこと、履いた感想などを書いています。

興味がある方は、お好きなところから読んでください!(予備知識学が無ければ最初の記事から)

また、何かのきっかけでここを訪問し、少しでも安藤製靴に興味が湧いた方は、とりあえず最初の下記の記事だけでも読んでみて下さい!

 

 

まずは革靴メーカーの安藤製靴と、かつて自分がメインに履いていたその安藤製靴の革靴 (OR1OR2)を紹介。

また、OR1とOR2に使用している皮革素材であるクロムエクセルの手入れについても、自分で注意している点についてまとめました。

 

丈夫な靴なので、中国の田舎道でも使えるのではないかと持ってきましたが、結局はあまり履いてないです...暑苦しくて…

 

あと記事内にも記載しましたが、注意点としては安藤製靴のタウン向けの靴は、経験上、コバの部分から簡単に浸水します。

 

登山靴にルーツを持つと言っても、防水性は引き継がれていませんので、気になる人は雨の日には注意して履くか、コバ部分の防水処理をした方がいいです。(今は要確認ですがが、昔は修理のときに要望があれば、安藤製靴でもコバの防水処理も対応してくれるとのことでした)

 

やはりノルウェージャン製法=防水という発想は短絡過ぎます。

素材、製法、細部の処理といった色々な要素が絡み合って作られた靴は、単純にproduct by process では語れません。

 

下記サイトの記事のように、文章の流れからうっかり防水性と謳ってしまったようですが、安藤製靴のHP内でも防水性に関しては触れていません... (むしろ、お店で雨の日は避けた方がいいと言われました...もしくは防水処理...)

 

安藤製靴はこだわりの素材・製法で、耐久性の高いブーツを製造しています。モデルの特性によって適した皮革を選定、特注したオリジナル金具を使用することも。耐久性の高さを追求し、分厚く強固な皮革を使用することも。靴の仕上げは、伝統的なノルウィージャンウェルト製法という、重登山用ブーツに用いられることが多い製法を用いており、防水性・耐久性を高めています。製法へのこだわりは、タウンユース向けのローカットブーツにも採用されるほど。

引用:安藤製靴のブーツは知る人ぞ知る名品!おすすめ8選を大公開!|YAMA HACK

 

一方、下記のブログでも雨の日に250を履いた感想が述べられていますが、やはり雨の日はレインブーツの方が...という結論です。(お子さんのようにスニーカー+防水スプレーでもいいのかも...)

日記|ノルウィージャン耐水試験|Reboot (すみません、現在リンク切れです)

 

この方はよく手入れされたG-BOOTSの紹介もされています。(ついにG-BOOTSも生産中止のようで...)


ちなみに、現在、私がメインに履いている靴は同じく安藤製靴製のホットスタッフ。(ORシリーズよりは蒸れにくい...)

ホットスタッフは残念ながら既に生産中止ですが、もう入手できないからといって大事に履くかといえばそんなこともなく (頑丈なので)、ガンガン履いて定期的に手入れをしていきます!

 

www.build-on-strength.work

 

ノルウィージャンウェルトとグッドイヤーウェルト製法の違い|安藤製靴の製法について調べてみた

安藤製靴を語る上で重要な要素の一つであるノルウェージャン製法。

そのノルウェージャン製法について、自分で調べたことをまとめました。

このブログの安藤製靴の関連記事で、一番アクセス数が多い記事です。

 

安藤製靴というよりも、やはり、“ノルウェージャン製法って何なの?”と思う人が少なからずいるということがわかりました。

これは記事にしておいてよかったです。

 

某YouTuber氏が安藤製靴のNeroの紹介動画で、気に入った点がノルウェージャンのL字ウェルトと説明していたのにも驚きましたが、その後、本当にNeroにL字ウェルトが付いたのにはもっと驚きました...

>> L字ウェルトのついたNero|安藤製靴HP

 

そして、グッドイヤーウェルト製法にもL字ウェルトはありますし、防水性に優れたものもあります。(革靴として)

靴の性能・デザインを決めるいくつかの要素の中の製法だけに着眼して、ノルウェージャン製法だから〜がいいと簡単に言うのはハッキリ言って難しいと思います。

ちなみに本文中で最後の方で少し触れたガエルネですが、調べてみるとホットスタッフとコバの構造が同様でした。

下記リンク先のリバースステッチ・グッドイヤーウェルト製法 (ややこしい...)で、私が履いていたNo.145も作られています。(コバの防水処理もバッチリでした。テカテカでしたが...)

 

>> GAERNE 靴の製法 

 

ガエルネも登山靴にルーツをもつ靴メーカーですが、こちらは頑丈かつ防水性も残されています。

反面、歩きやすさは安藤製靴の方が上に感じました。(またバイクに乗るとしたら、多分バイク用の靴はガエルネを選びます…)

 

今回の記事ではかなりマニアックな部分を突っ込んで調べましたが、もっと広い一般的な製法の比較は、例えば下記の方のブログに綺麗にまとまっています。(ノルウェージャンウェルトのところに防水性が高いと書いてあるのが気になりますが...)

個人的に靴の製法を勉強するのはけっこう好きです。

 

 革靴の底付け製法11種類の違いと特徴まとめ【保存版】 | みんくすのぐーぶろ。

 

あと、ノルウェージャンの語句としては下記の通りで、複数の国と言葉とカタカナ読みのため、色々な呼ばれ方があります。(ややこしいですが...)

  • Norwegian/英語/ノルウェージャン、ノルウィージャン
  • Norvégien/フランス語/ノルヴェージャン、ノルヴェイジャン
  • Norvegese/イタリア語/ノルヴェジェーゼ、ノルベジェーゼ

 

検索数から推定すると、カタカナではノルウィージャンが一番ポピュラーかもしれません。(ノルウェージャンは猫として認知されているのかも)

ただし、ドレスシューズはノルベジェーゼを使うことが多いようです。(ドレスシューズへの応用はイタリアで始まったようなので...)

 

あと、まとめきれなかったのが、下記リンク先のリバースウェルト式製法 (外縫い式グッドイヤーウェルト製法)

>> Ladies U-tip Moccasin Shoes|リーガルメイド|REGAL ブランドサイト

 

ごちゃごちゃするので、今回は記事に言及しませんでした... (いつか追記するかも...)

 

どうぞ、ご覧ください!

www.build-on-strength.work

 

ノルウェージャン製法の革靴を分解して構造を理解する|安藤製靴の革靴

安藤製靴の革靴を実際に分解し、その構造を確かめてみました。

ここまで来るとかなりのマニアだと自覚。(分解当時はけっこう暇でしたが...) 

 

こんな検証はネットで探しても他に見つかりませんので、他のマニアにとっても貴重な情報です。(と個人的に思っています)

そして費用もかかったので、個人的にはこれが一番読んでもらいたい記事。

 

具体的には安藤製靴のホットスタッフを分解したのですが、コバや靴底の構造がよく分かってとても満足しました。。(リブがどうなっていうんだろうとか、ずっと疑問でした...)

この後、供養 (?) の意味も込めて、ホットスタッフを購入しました...

 

ちなみに検索キーワード「安藤製靴+分解」で、検索結果はこの記事がずっと一位なのですが、そのキーワードで読みに来てくれる方はいないようです...

期待とは裏腹に、なぜか「安藤製靴OR8」で引っかかってしまい、仕方なく見てくれる方はいるようです... (原因不明です)

このままでは分解されたホットスタッフも浮かばれません... (なんとかせねば...)

 

是非、読んでください!

www.build-on-strength.work

 

安藤製靴の革靴|革靴のサイズ感

上で述べたように、最近、安藤製靴のホットスタッフを購入しました。

久々に安藤製靴の靴を買ったので、サイズに関する自分の考え方について書いてみました。

このホットスタッフが生産中止になったのは非常に、非常に残念です… (ブログやってると検索数なんかもわかりますが、ホットスタッフはたしかに人気無かったようですね...)

 

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以前よりお問い合わせを多く頂戴しているのが、やはり履き心地やサイズ感です。
中々、営業日に来店出来ないお客様が多く、おられるので近い日になってしまいますが、11月3日(日)12時から17時まで営業致しますので試し履き、サイズ確認を行いたいお客様は是非お越し頂きたいと思います。

        引用:安藤製靴HP <お知らせ>

 

安藤製靴のHPを見ると、やはりサイズ感に不安を持つ方は多いようですね。(ついに日曜日に営業ですか...)

まあ、実際に試し履きしても、どの程度革が伸びるかは予測が難しいところです... (失敗経験者です)

少しでも不安な方の情報の足しになればと...

 

どうぞ、ご覧下さい!

www.build-on-strength.work

 

チロリアンシューズのあれこれ|所有靴の紹介や最近の検索動向など...

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中国来てから1年半ほど経過したのですが、日本から新たにケベックレザーver.のOR1を持ってきました。(日本の家に置きっぱなしだったものです)

中国の広東省だと沖縄並みの暑さなので、今までクロムエクセルver.のOR1もあまり履いていなかったのですが、日本に帰国した際にやっぱり履きたくなってしまい、勢いで中国に持ってきてしまいました。黒系が多かったので、茶系で経時変化を楽しもうかという気持ちもあります。

入れ替わりでホットスタッフは会社に持って行って履くことにしました。

 

このケベックver.のOR1はあまり履いていないのでメンテもほとんどしていませんでした。なので、すくい縫いの部分もワックス等は塗り込んでいないので、その辺のケアから始めています。(浸水防止のため)

まあ、でも基本的にオイルドレザーはメンテナンスがあまり必要無いので、コバ以外はメンテといってもブラッシングが中心ですが...

 

その他、チロリアンシューズ全般について軽くネット検索し、結果をまとめています。

検索数でみると、チロリアンシューズというキーワードは安藤製靴に匹敵するぐらい検索ボリュームがあり、そこそこ興味を持っている人はいそうです。

イタリアとかフランス製のチロリアンシューズは検索ボリュームでいうと少なそうな印象です。(価格が手頃なKleman (クレマン) とかは多そうですが、後は割高っぽいし...)

 

チロリアンシューズに興味のある方は、どうぞ、ご覧下さい!

www.build-on-strength.work

 

以上、ご覧いただき、ありがとうございました!

 

安藤製靴|革靴のサイズ感

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 左:ホットスタッフ (26.0cm)、 右:シーホース (25.5cm)

 

※この記事は安藤製靴の靴のサイズ感がテーマです。

昨年、安藤製靴ホットスタッフが廃盤になると知り、日本に帰国した際に急いで購入しました。

昔、安藤製靴にはホットスタッフとほとんど同じ木型を使って作られていたシーホースという靴も存在していましたが、実はこのシーホースも10年ほど前に購入していました。(下がその所有しているシーホースの写真です)

 

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シーホース

 

私にとってこのシーホースという靴はとても履きやすく、その気になれば走ることも可能なくらいフィットしている靴ですが、製品としては既に廃盤。 (安藤製靴の店主に聞いた話では、これを作るのを得意としていた職人が辞められたのが理由とのこと)

そこで、このシーホースがもう少し傷んできたら (本当に頑丈で傷も付きにくいですが...)、ほとんど同じ木型を使っているホットスタッフをいつか購入しようと密かに目論んでいたところに、またもやそのホットスタッフも廃盤案内。

今回、購入に踏み切った次第で、これを機会に今回は安藤製靴の革靴のサイズ感について書いてみたいと思います。

 

実店舗で購入するか、ネットで購入するか

安藤製靴で靴を買うにあたり、実店舗で購入するか、ネット通販で購入するかを選択することになります。

ホットスタッフを購入するにあたり、シーホースでの経験からそのサイズ感は分かったつもりでいました。

しかし、シーホースの購入当時はキツ目を購入し、革が伸びて馴染んでくれるのに2〜3年を要した苦い経験が蘇ってきて、結局、錦糸町の実店舗に行くことに。

昔はキツ目の革靴を購入して、自分の足にフィットさせることになぜだか、憧れていたんですよね…

しかし、コイツの革はとても手強く、前に紹介した伸び易いクロムエクセルとは大違い。

なんとか勝ちましたが、長期戦でした。(キツイとあまり履かなくなる → 馴染むのに時間がかかるという悪循環...)

そして、年を取り、再戦することには迷いが…

 

実店舗で試し履き

久しぶりに訪問した錦糸町の安藤製靴で、そのホットスタッフを試し履き。

比較のため、シーホース25.5cmを履いて行きました。

そこでホットスタッフ25.5cmを履いてみたところ、キツイ...同じ木型にはとても思えない…

革は昔と同じくオイルドアッププルレザー。

履けないことはないけど…これが現在履いているシーホースと同じ感触になるとはとても思えず戦意喪失。(シーホースもかなり伸びていたんだと実感)

少し迷いましたが、結局、26.0cmのホットスタッフを購入しました。(下の写真は購入してから約3ヶ月後)

 

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 ホットスタッフ (The 実用靴です)

 

サイズ感

というわけで、今履いている25.5cmのシーホースよりも一回り大きい、26.0cmのホットスタッフを購入しましたが、今のところ何の問題もなく、馴染んでいます。

シーホースを長時間履くときは、まだ小指の辺りがたまに痛くなるので、薄手の靴下を履くようにしていましたが、このホットスタッフを履くときは靴下は何でも大丈夫です。

 

そればかりか、脱ぎ履きに差し支えないくらいに紐を緩めて履いても、踵が浮くようなこともほとんどありません。(履きはじめ、紐をきっちり縛ると足の甲が擦れて痛かったので、しばらく紐を緩めて履いていましたが、緩めたままでも普通に歩く分には別に何の問題無いことに気付きました)

思いがけず脱ぎ履きがとても楽ちんになったので、メインに履くようになってしまいました...

 

前に紹介したOR1OR2では、このような履き方は私の足ではできません。

自分の足の形や歩き方と、ホットスタッフの靴の型や靴底の強度がけっこう合っていたのでしょうね。(コバにウェルトの無いホットスタッフの靴底は安藤製靴にしては柔らかめです)

シーホースのときに頑張って靴と格闘していたのが、馬鹿みたいです...

 

もうキツめの革靴を伸ばして自分の足に馴染ませるというようなことは、二度としないと思います。(無理はよくない)

ただし、2~3年後、革が伸びてユルユルなんて可能性も、もしかしたらあるかもしません。

でも、そもそもキツめを履いていなければ、それほど革も伸びないのではないかという風に楽天的に今は考えています。(そのときは靴下を少し厚めにしたり、紐をきちんと結べばいいかと...きっとユルユルになるのはクロムエクセルだけだと...)

 

補足

安藤製靴の靴を既に履いている人は、他の靴のサイズ感が知りたいこともあると思います。(すべて木型が異なるので)

また、私の足の実寸は25.1 (左) /25.4㎝ (右)です。(足長の計測方法|安藤製靴)

参考までに、私が持っている安藤製靴の靴のサイズを挙げておきます。(他に参考になりそうな革靴としてはリーガル系のビジネスシューズがありますが、25.5㎝がちょうど良かったです。2足ありましたが一足は型番不明で、もう一足はコベントリー | リーガルです)

 

 

OR1 (クロムエクセル) は最初に26.0cmを買いましたが、ユルユルになってしまいオークションへ

ただし、今履いているOR1&OR2 (クロムエクセル) は何年も履いているので、フィット感が欲しいときは厚めの靴下を履いたりして調整しています。

ZIIは最初に25.5cmを買いましたが、実際に履いてみると寸詰まり感が消えず、オークションへ。

個人的には失敗したと思ったら、頑張らずにさっさとヤフオク メルカリで売ってしまうのが正解なのではないかと思っています。

 

以上、最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

下記は本ブログの安藤製靴に関する記事です。よろしければどうぞ!。

 

 

ノルウェージャン製法の革靴を分解して構造を理解する|安藤製靴の革靴を題材にして

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今回のトピックは革靴の分解、とくにノルウェージャン製法 (ノルウィージャン製法など色々と呼び方があります)で作られた安藤製靴のホットスタッフという革靴の分解です。

ノルウェージャン製法ってなに?という方は先にこちらの記事を読んでみて下さい。(ただし、やや長めの記事です)

 

革靴好きな安藤ファンとして、以前からやってみたかったテーマです。

ノルウェージャン製法で作られた革靴の構造にご興味のある方はどうぞご覧ください。

 

 退職後の休暇中に取り組んだこと

勤務していた日本の会社を辞めてから、休暇を2か月ほど取りました。

中国に行く準備でいろいろと大変でしたが、久々の解放感に浸りながら本当にのんびりできました。

 その休みを利用して、以前からやってみようと思っていた2つのこと取り組めました。

 

1. ブログの開設

1つ目はブログ開設で、このブログです。(人生初ブログです)

WordPressは敷居が高くみえたので、「はてな」+「独自ドメイン」に取り組んでみました。

スタートしたばかりでまだまだ手探り状態ですが、 休み中になんとかGoogleアドセンスの導入までは漕ぎつけました。(形だけでもブロガーの真似をしたかっただけです)

肝心の内容の方はまだまだ試行錯誤中です...

 

2. 革靴の分解

2つ目は革靴の分解で、それも先に記事にした安藤製靴の革靴の分解です。

革靴は、素材工場の機械職人のスキル工芸使い手の嗜好相反する特性 (例えば履き心地と堅牢性) といったいくつもの要素が絡みあって製品になっていて、単純な工業製品ではありません。

 

自分がエンジニアであることも関係しているかもしれませんが、このような複雑要素から造り上げられ、しかも自分で体感できる革靴に非常に惹かれています。

革靴というとスーツにあうようなドレスシューズにハマる人が多いと思いますが、私の場合、普段スーツは着ないのでカジュアルに使える安藤製靴の革靴にハマりました。

 

そうこうしているうちに、履いたり、手入れしたりしているだけでは物足らなくなり、いつしか分解して見えていない部分を見たいと思うようになりました。

しかも、インターネットで探しても安藤製靴の靴の分解に関しては出てきませんので、これは自分で分解してみるしかないと思っていました。

 

そのため分解する靴は前々から入手してありましたが、仕事も落ち着かなかったこともあり、なかなか実行できませんでした。

しかし、今回、ついに念願の分解、しかも安藤製靴の靴を分解することができました。(大人の夏休みの自由研究です!)

 

どれくらいの需要があるのか全く不明ですが、ノルウェージャン製法の革靴の構造をよく知りたい人にとっては貴重な情報だと思いますので、ここで共有したいと思います。

 

 

 革靴の分解<実行編>

分解する靴:ホットスタッフ

今回、分解する靴は安藤製靴のホットスタッフというオーソドックスなプレーントゥタイプの革靴です。

入手経路は内緒ですが、旧持ち主には分解の了承を得ています。(使い込まれていませんが、10年ほど前に製造されてものです)

           

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図1. ホットスタッフ (安藤製靴)

 

このホットスタッフに使用されている革 (オイルドプルアップレザー) の色ムラ感も私の好みですが、覚悟を決めて分解を始めます。(ちなみに私にはサイズが小さいので履けません)

 

 

アウトソールの分離

まずはドライヤーで軽く温めて、アウトソール (ビブラム製のラバーソール) を剥がします。

ペンチと楔を使って、じわじわとなんとか剥がしました。(接着剤でくっついています)

下がアウトソールを剥がした写真になります。

 

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図2. 横からみたところ 

 

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図3. 裏側からみたところ (左がアウトソール、右側がミッドソール)

 

写真ではわかりませんが、ビブラムソールの内側の踵の部分にはMade in Itaryの記載があります。

図3の右側に見えているのはミッドソールを裏側から見たところで、白いステッチは出し縫いの糸です。

ここまでは外側からのイメージ通りで、続いて、ミッドソールの取り外しにかかります。

 

 

ミッドソールの分離

ここからが本題ですが、まずはミッドソールの出し糸を外していきます。

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 図4. 出し糸とミッドソール

 

裏側から見えている出し糸をカッター切断して、アッパー側から見えている出し糸をラジオペンチで引き抜きました。(図4)

図4に見えているのが引き抜いた出し縫いの糸で直径は2mm程あり、縫われている状態で見るのよりもかなり太く感じます。

次にミッドソールをゆっくりとめくっていきます。(手応えがあるので、接着剤も使われていそう...)

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図5. ミッドソールを剥がしているところ

 

ついに、隠されていた部分が顔を出してきました!

上の図5で白く見えているのは発泡体らしく押すと潰れますので、おそらくクッション材の役割を果たしていると思います。

一部、ミッドソールと固着していて千切れてしまいました。

もしかしたら、温めればもっとスムーズに剥がせたかもしれません。

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図6. ミッドソールの分離後 (左がミッドソール)

 

図6の左側が革のミッドソールで厚みが約4mmあり、とても頑丈です。

少し苦労しましたが、ミッドソールがなんとか分離できました。

次は白いクッション材を除去していきます。(クッション材の材質は不明ですが、厚みは約3mmあります)

これは完全に接着している上に脆いので、こそぎ落としていくしかありません。

 

 

クッション材の分離

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図7. クッション材を剥がし中

 

クッション材を剥がしていくのはかなり面倒です。

図7に見えている部位は外側からアッパー、爪先の補強材、インナー、リブとなっています。

リブは布テープと芯材で構成されています。(芯材を布テープで上から抑え込んでいる感じ)

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図8. 中底の裏側

 

ようやくクッション材を除去すると図8のようになります。

中底を補強しているシャンク (感触からおそらく木製) は、とても強力に中底に接着していて剥がせそうにありません。

中底の裏には文字が記載されています。(下が拡大図です)

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図10. 中底の裏側 (拡大図)

 

図10から中底の裏側に記載の文字がわかりますか?

これは「Webron® 437」と書いてあり、武田産業という会社の登録商標です。

これはペーパーボードと呼ばれるもので紙繊維とラテックス (ゴム系材料) の複合物とのことです。(この材料はすでにメーカーの武田産業の方で製造を中止しているので、現在の安藤製靴の靴は別の材料で代替しているのでしょう)

 

おそらくこのペーパーボードは中底の補強を目的に使っていると推定しますが、同時にリブやシャンクとの接着が非常に強固にできているのもこの材料の性質ではないかと思います。

リブなどを革製の中底にダイレクトで強力に接着しようとすれば、革表面への密着力を向上させたり革表面を丈夫にしたりするようなプライマー処理が必要になると推定しています。(リブなんか特に接着面積も狭いので強接着が難しいと思います)

 

つまり、中底の補強とプライマー処理を兼ねて、このペーパーボードを使っているのではないかと推定しています。(一般的にペーパーボードは革よりも接着しやすいです)

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図11. リブの側面図

 

中底とアッパーの分離

いよいよ次は、中底とアッパーの分離です。

図11に見えるすくい糸を外していきますが、これは接着剤で固まっていて切り取るしかありません。

図11でいうと、インナーとリブの間にカッター入れてカットしていきます。

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 図12. 切り取ったすくい糸

 

図12は切り取ったすくい糸ですが、接着剤でコチコチになっています。

下は取り出した中底の全体像です。

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図13. 取り出した中底

 

下はリブ周辺の拡大図です。

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 図14. リブ周辺の拡大図

 

リブの凸部の幅は約4mmで、高さは約3mmです。

よく見ると凸部の上部には布テープがなく、両サイドに貼られて固定されていました。

このようにテープを貼るのは非常に難しいと思いますので、最初にリブの芯材を覆うように布テープを貼り、その後で、インナーのはみ出し分を除去する際に、リブ凸部上部の布テープも一緒に削り取られているではないでしょうか?

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 図15. リブ周辺の断面図

 

上の図は、リブ周辺の断面です。

製靴書 (誠文堂新光社、P17) によると、一般的なグッドイヤー製法の靴だとリブの高さが5mm程度中底の厚みが2mm程度のようです。

一方、この安藤製靴の靴はリブの高さが約3mmで、中底の厚みが約4mm (補強のペーパーボードを含む) となっています。

 

グッドイヤー製法の靴はリブの高さ5mmの空間に、復元力の低いコルクを充填することと、中底も比較的薄いこともあって、履いていくと中底が足の形に沈み込んでいきます。

それに対し、安藤製靴の靴はリブの高さ3mm空間に充填されているのが、復元力のあるクッション材であることと 中底は分厚く頑丈なため、中底はグッドイヤー製法に対して沈みにくくなっています。(足の指の跡がつく程度)

 

なんとなくグッドイヤーの方が足の形状に変形してなじみやすい気もしますが、その分堅牢性には劣るのかなと思います。(この辺は好みの問題でしょう。素材がクロムエクセルとグッドイヤー製法の組み合わせは履きこんだら、緩々になりそうで怖いですが...)

 

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図16. アッパー

 

図16は分離したアッパーの写真です。

このホットスタッフはウェルトを使用しておらず、アッパーが直にミッドソールに出し縫いされているタイプです。(パラブーツのHPにも記載があるようにノルウェージャン (Norwegian) 製法の1種です。ノルヴェジェーゼ (Norvegese) 製法と呼ばれることもありますが、フランス語のNorwegianのイタリア語訳がNorvegeseです)

 

また、縁のテカテカしているのは目止め材の跡でして、このホットスタッフは革靴としては防水性を意識した造りになっています。(目止め材は見た目が嫌な人もいるかもしれません)

防水性が高い理由としては、ウェルトを使用しないので水が入る隙間も無く、水の侵入しやすい縫い目の部分には目止め材が使用されているからです

 

また、ウェルトを使用しないため、ソールの返りがよくなります。(あくまで安藤製靴の靴の中で比較した場合。一方、ホットスタッフはデザイン的に踵が浅いという特徴もあるので、歩きやすさに関しては自分で確かめるしかないと思います)

このホットスタッフは構造的に登山靴にかなり似ていて、安藤製靴のルーツを感じる実用性重視の製品だと思います。

 

一方、過去に本ブログで紹介した安藤製靴のOR1やOR2では、ウェルトとアッパーの隙間から水が浸入しやすかったり、目止め材が使われていないため大きな縫い穴から水が入りやすくなっていたりするので、雨の日には注意が必要です。

私の場合、爪先の部分から浸水経験があったので、目止め材ではありませんが下記の防水ワックスをコバの縫い目に塗り込んでいます。目止め材を使用している安藤製靴の靴って意外とあんまり無いです...

 

[コロニル] 防水ワックス アウトドアアクティブレザーワックス (Amazon.co.jp)

 

ちなみにリブ部分に空いている縫い目の穴は、下図を見てわかるようにかなり大きいです。(直径2mmくらい)

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図17. リブ部分の縫い目の穴

 

このリブに空いた多数の縫い目の穴が水の侵入経路になるので、縫い目の防水処理は絶対にした方がよいと思います。(雨の日や雨上がりの日でもガシガシ履きたい方は特に)

なお、安藤製靴のお店の方でも修理の際に依頼すれば、目止め材処理もしてくれるそうです。(雨の日に防水性を過信して浸水してしまった人がかなりいるのではないかと思います)

 

 

ホットスタッフの断面図

今回のまとめとして、上記の分解作業を元にホットスタッフの断面構造を書きました。(下記です)

 

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図18. ホットスタッフの断面図

 

今回、念願の安藤製靴の靴の分解ができて非常に満足しています。

また、シンプルでありながら機能的にも登山靴っぽさを残しているホットスタッフにとてもに惹かれました。(おそらく購入します! → 購入しました(追記))

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残念ながらこのホットスタッフは製造中止の案内が安藤製靴のホームページに掲載されたので、慌てて購入しました。

サイズはOR1よりも0.5㎝大きいサイズでピッタリでした。

私の場合、紐を緩めて履いても踵が浮かないので、紐を解かずにそのまま脱ぎ履きできて気に入っています。(楽ちんで、もっと早く買っておけばよかった...)

  

最後に、下記は途中で紹介しました私がコバの縫い目の防水用に塗り込んでいるワックスです。浸水経験のある方はぜひ試してみて下さい!

 

以上、非常に長くなってしまいましたが、ご覧いただき、ありがとうございました!

 

 

下記は本ブログの安藤製靴に関するその他の記事です。よろしければどうぞ!

 

 

ノルウィージャンとグッドイヤーウェルト製法の違い|安藤製靴の製法について調べてみた

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今回は趣味の革靴、特にその製法についてのトピックです。(マニア向けです)

中国在住者としては趣味の話ができるレベルまで中国語が上達したいですが、まだまだ先は長いです...

 

 ノルウェージャン製法とグッドイヤーウェルト製法とは?

前回、下記の記事で安藤製靴の靴を紹介し、その中で安藤製靴の靴はノルウェージャン製法で作られていると述べました。

 

 ここで、ノルウェージャン製法 はノルウィージャン製法ノルウェイジャン製法、ノルヴェイジャン製法、ノルヴェジェーゼ製法、ノルベジェーゼ製法などとも呼ばれ、これらは英語 (Norwegian)・仏語 (Norvégien)・伊語 (Norvegese) のカタカナ表記が混ざってややこしくなっています。

この中でノルヴェジェーゼ製法、ノルベジェーゼ製法はイタリア語で、イタリアから広まったドレスシューズの説明で使用されることが多いです。

下記は有名なデザイナーであるステファノ・ブランキーニ氏のインタビュー記事からの抜粋です。

そう、イタリア語でね。英語ならノルウィージャン。ノルベジェーゼという名称はボクが考案した言葉なんだよ。

スペシャルインタビュー ステファノ・ブランキーニ

 

安藤製靴の説明によると、ノルウィージャン製法とは「甲素材(アッパー)と革中底を横にスクイ縫いを行い合亀材(ミッドソール)を縦にダシ縫いを行います」とあります。

昔、ノルウィージャンについて興味を持ちましたが、安藤製靴のHPにはノルウィージャンについて他に記載がないので、色々と調べてみました。(15年ほど前の話です)

その結果、様々な情報が得られましたが、靴専門家の間でも諸説あるため、これが正しいノルウィージャンという結論は得られませんでした。

 

靴職人や靴メーカーが各々の定義でノルウィージャンを定義している状況...

 

ただし、最大公約数的なところをみると、上記にあるような「アッパー (ライニング含む) と中底とを水平にすくい縫いし、コバ部とミッドソールを縦に出し縫いをする製法」に落ち着くのかなと考えていました。

この場合、ノルウィージャンとグッドイヤーウェルト製法との違いは、アッパーと中底の固定の部分に関してのみで、下記のように解釈してました。

  • ノルウィージャン  :水平にすくい縫い
  • グッドイヤーウェルト:斜めにつまみ縫い

 

安藤製靴、もしくはノルウィージャンに興味がある人であれば、この 辺まで調べた人も多いのではないかと思います。

実際に上記の違いが履き心地や堅牢性に影響するのか興味もありましたが、その部分だけ異なる靴などあるはずもなく確かめようもないので、ノルウィージャンとグッドイヤーの違いには興味が無くなっていました。

 

しかし、ある動画がきっかけで、ノルウィージャンとグッドイヤーウェルトに関して、また少し調べてみようかなという気に。

前回、調べたのは15年ほど前でもありますので、多少何か新しい情報も期待していました。

 

そこで、今回、ノルウィージャンとグッドイヤーウェルトについて、あらためて最近の解釈について調べてみました

 

 再調査のきっかけの動画

きっかけはこれ。

 


安藤製靴 NERO、買ってみた。 

2:00~がノルウィージャンウェルトに関するところ

 

動画を見てわかるようにL字のウェルトがあるのがノルウェージャンウェルトで、それが安藤製靴のよいといわれる理由の一番目に挙げられています。

基本的には安藤製靴ついて褒めているを見れば好意的に受け取りますが、今回のは大いに違和感あり。

もちろん、ノルウェージャンの解釈について云々いう気もないです。

 

どう見ても、目の前のその靴 (NERO) にL字ウェルトはついていないだろう~ (物理的に)

 

下の写真を見てもNEROのコバにL字のウェルトは付いてないのは明らかです。

 

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安藤製靴NERO|安藤製靴のHPより引用 (2019年4月追記:最近のモデルは本当にL字ウェルトに変更されました)

 http://www.ando-shoe.com 

 

NEROのコバは動画中で出てきたレッドウィングなんかのグッドイヤーと見た目は同じはずなので、L字ウェルトがNEROを選ぶ理由にはならないだろ~というのが率直な感想です。(L字ウェルトは目で見てもわからないものと考えていたのか...)

 

ちなみにL字ウェルトは、ご存知の方も多いと思いますが安藤製靴の例で挙げると下記ようなコバです。

 

f:id:zhenshux:20180717183805j:plain   安藤製靴 OR2|L字の (ギザ) ウェルト

 

また、アッパー側に曲がったウェルトがノルウェージャンだけかといえば、そういうわけでもなく、下記のようにグッドイヤーウェルトでも見た目がL字ウェルトのものもあります。

 

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Bourton|ストームウェルト (見た目はL字ウェルト) /Tricker'sのHPより引用

https://www.trickers.com/row/

 

というわけで、久々にノルウェージャンとグッドイヤーウェルトの違いについて意識してしまったので、再度、調べてみようかなという気になりました。

 

 ノルウェージャン解釈の典型例

まずはおさらいとして、ノルウェージャン製法で有名なパラブーツのHPの記載をチェックしました。

生産量までは調べていませんが、ノルウェージャンの世界的リーダーと自社のHPで謳っているので、典型例として妥当ではないかと思います。

 

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パラブーツのHPより引用

https://www.paraboot.com/en

 

パラブーツのHPの説明をまとめると下記のようになります。

ノルウェージャン製法とは? (パラブーツの定義)

  • ウェルトを使用し、2本の縫い目が見える
  • アッパーを外に折り返してウェルトの代わりにしてもOK
  • 頑丈で快適
  • ウェルトの独特な位置のおかげで防水性と耐久性が向上
  • 呼び名がいくつかあるが、ノルウェーとは関係ない

 

グッドイヤーウェルト製法とは? (パラブーツの定義)

  • ウェルトを使用し、2本の縫い目があるが外から見えるのは一本だけ
  • シャープな形状が可能だが、ノルウェージャンと同等な防水性と耐久性
  • 伝統的に高級な靴に採用される
  • 呼び名は機械の発明者

パラブーツの製品ラインナップを見てみると、ノルウェージャンをカジュアルやスポーティなラインに、グッドイヤーウェルトをビジネスやドレスシューズのラインに適用しているようです。(製品の説明にノルウェージャンかグッドイヤーウェルトかの記載があるので判別可能)

また、上の写真からノルウェージャンとグッドイヤーウェルトで機械を変えているのもわかります。

この辺りの情報は昔と大差無いようです。

 

次に構造的な記載のある典型例も欲しいところですが、Web上の情報だと出展が不明確な点もあるので、書籍から例を引用します。

今回は下記の書籍から引用します。(リンク先はAmazonです)

製靴書‐ビスポーク・シューメイキング: オーダーからその製作技術と哲学まで

 

ノルウェージャン製法とは? (製靴書の定義)

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ノルウェージャン・ウェルテッド|製靴書 (誠文堂新光社)、P59

 

アッパーを外側に折り曲げているのがノルウェージャンという定義もありますが、上記のようにウェルトを介してのミッドソールに固定されている定義もあります。

パラブーツや安藤製靴のORシリーズも、コバ部分は上記のような感じでしょう。(タウンユースであれば)

この図にはノルウェー生まれの~とありますが、先ほどのパラブーツの例ではノルウェーは関係ないと記載があり、正反対です。

この辺は昔と同じく、日本人&素人には調べるのが難しいので深入りはしません。

 

グッドイヤーウェルト製法とは? (製靴書の定義)

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グッドイヤー・ウェルテッド|製靴書 (誠文堂新光社)、P58

 

この図も普通のグッドイヤーウェルトの構造で、グッドイヤーウェルトの構造はどこもだいたい同じです。

一点を除いては...

一点というのは上の図でいうところの「つまみ縫い (グッドイヤー式)」の部分です。

この部分が最近は「すくい縫い」と書かれているサイトが圧倒的に多いことに気づきました。

「すくい縫い」は機械化が難しいので、「つまみ縫い」に変更することで機械化に対応しグッドイヤーウェルト製法として大量生産できるようになったというのが、昔の私の理解でした。(なお、上記の製靴書にもそのような記載があります)

 

しかし、最近はほとんどのサイトで、グッドイヤーウェルト製法も「すくい縫い」と書かれています。(リーガル、スコッチグレインといった大手ブランドがそのように記載しています)

「縫い方」というよりも、中底/ウェルト/アッパーを「縫いつける工程」のことを「すくい縫い」と呼んでいるようです。

「すくい縫い」の部分まであいまいになったら、ますますノルウェージャンとグッドイヤーウェルトの違いはわからなくなってしまいます。

 

そこで、この「すくい縫い」の部分をもう少し掘り下げて調べてみることにしました。

 

 すくい縫いって何?

靴職人や靴メーカーのサイトを調べても埒が明かないので、切り口を変えました。

今回は、機械屋、つまりミシンを製造している機械メーカーがどのように「すくい縫い」を考えているのか確かめるため、特許庁のHPで特許中の記載を調べてみました。

その結果、代表的な「すくい縫い」とは下記ように、曲針を使用していること、円弧軌道で揺動 (振り子運動) がポイントでした。(いくつかの特許明細の中に見られる共通の表現)

 

【特許出願公開番号/JP2004173945A - Google Patents

すくい縫いミシンは、曲針よりなる縫い針を針振り軸まわりの円弧軌道上で揺動せしめる針駆動機構と・・・

 

そういえば、上のパラブーツのノルウェージャンの機械も何となく針が曲がっているように見えますね。(振り子のような動きもしそうです)

これに関しては上の「すくい縫い」の記載通り、曲針を使用し円弧軌道で縫っている機械が映っている動画がYoutubeで見つかりました。

残念ながら安藤製靴の動画ではないと思いますが、上の「すくい縫い」の説明にピタリと当てはまります。(下の動画の0:46~がその場面です)

 


TRAVERSE TYROLEAN

 

 一方、グッドイヤーウェルト製法の動画もYoutubeにたくさん見つかりました。

下記がそのグッドイヤーウェルトの例ですが、上の動画と比較すると針の動きが異なるのがよくわかると思います。 (下の動画の5:10~がその縫い合わせの場面です)

 


靴という名の道具

 

二つの動画で縫い方の違いがわかりましたか?

私としては、もうこれくらいで納得しようかと思います...

 

ちなみに、上のどちらの動画も私は好きですね。

クラフトマンシップと工業生産の中間領域のような、ミックスしたような感じが好きです。

今回、これらの面白い動画が見つかったのが一番の収穫でした。

 

 結論

動画を見てわかるように、グッドイヤーウェルト製法が実際に機械メーカーのいう「すくい縫い」をしているわけではないと思います。

なんとなく、ハンドソーンのイメージを利用したいという業界のマーケティング戦略のようなものを感じなくもないです。

 

同様に、ノルウェージャンという用語の使い方に関してもそう感じるところがあります。

登山靴に使われた流れから、ノルウェージャン製法だから雨や雪に強いかというとそんなわけもなく、ステッチの縫い目に防水処理が施されていないのであれば簡単に浸水してきても不思議ではありません。(経験済み)

 

雨や雪に対する防水性は製法だけでなく、革の材質や縫い目の処理などの影響も大きいですが、街履き用のノルウェージャン製法の靴の多くは縫い目の防水処理がなされているようにはみえません。(おそらく目止め剤なんかを使用すると、テカテカしたりして見栄えが悪いのかもしれません...)

 

逆にグッドイヤーウェルト製法でも防水性の高かった靴もありました。(下記のガエルネはバイク用に4年ほど使用していましたが、防水性に何の問題もありませんでした)

▼参考 

GAERNE  No.145 (JAPEX 公式サイト)

 

そう考えると、何が正しいノルウィージャン製法とか考えてもあんまり意味ないですね。(それら製法の違いなんかは、消費者が実際に実感するのが容易ではないので、靴メーカーが好きなようにアピールしてくださいという気持ちが強くなりました)

 

見た目も含めて靴の良し悪しは製法以外の要素も多分に関係しますので、やはり自分が実際に履いてみて判断する (価値基準も自分で決める) ことが一番重要だと再認識。(しばらく履いてみないとわからないことも多いので、難しいですが…)

 

以上、長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました! 

 

 補足) ノルウィージャン (ノルベジェーゼ) 製法、ウェルトの有無、コバの構造に関して

終わったと見せかけて補足を追加してしまってすみませんが、お時間のある方はもう少しだけお付き合いしてください...

 

上記では「グッドイヤーウェルト製法」に対して、「ノルウィージャン製法およびノルウィージャンウェルト製法」を比較してたので、その総称としてノルウィージャン製法” としていました。

混同させてしまったかもしれないので、最後に補足しておきます。

 

ご存知の方も多いのかもしれませんが、ノルウィージャン製法にはウェルトの細革をしないものもあり、その場合は下記のようにアッパー (甲革) を外側に折り返す構造になっています。

 

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上は安藤製靴のホットスタッフというオックスフォードタイプの靴をモデルに描いた断面図です。(ドレスタイプではなくアウトドアシューズです)

アッパーがウェルトの代わりになっていて、ミッドソールとアッパーが直接出し縫いされています。

 

また、ステファノ・ブランキーニ氏のインタビュー記事から再び引用させてもらいますが、ドレスシューズ系のノルベジェーゼ製法の靴も下図のようにアッパーは外側に折られています。(私のイメージではドレスよりの靴が、ノルウィージャンというよりもノルベジェーゼ製法と呼ばれることが多い気がします...イタリア系は当然ですが...)

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  引用: スペシャルインタビュー ステファノ・ブランキーニ

 

さらに、上のノルベジェーゼ製法の靴の場合はミッド―ルがアッパーよりも外側に張り出していて、張り出した部分に2本目の出し縫いがされています。

また、すくい縫いの部分は装飾も兼ねているのがわかります。

▼参考

Branchini Shoes handmade shoes (公式サイト)

 

というわけで、今回、紹介させて頂いたノルウィージャン (ノルベジェーゼ) 製法とノルウィージャンウェルト製法の靴の違いについては、ウェルトの有無以外にコバに対するアッパーの折り曲げる方向の違いがあります

また、少ないですが、アッパーを外側に折り曲げた上で、ウェルトを重ね合わせるノルウィージャンウェルト製法の靴も存在しますので、ウェルトがあるからアッパーが絶対に内側に折れているとは限りません... (ソールの返りが悪そうなイメージですが...)

下図みたいな構造です。(下図はアンドリュー・トレッキングシューズのカタログからの引用です)

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少し切れが悪いですが、補足説明は以上です。

最後までご覧いただき、本当にありがとうございました!

 

 

下記は今回参考にした本です。

製靴書‐ビスポーク・シューメイキング: オーダーからその製作技術と哲学まで

製靴書‐ビスポーク・シューメイキング: オーダーからその製作技術と哲学まで

 

 

 追記

実際にノルウェージャン製法の安藤製靴の革靴を分解して、その構造を検証してみました。

興味のある方は、是非ご覧下さい!!

 

※本ブログの安藤製靴に関するその他の記事です。よろしければどうぞ!

 

下記ではベスタ社のケベックレザーを使用した安藤製靴のチロリアンシューズの紹介や最近のチロリアンシューズに関する検索動向をまとめています。

 

クラフトマンシップと工業生産の中間領域、そんなアナログな雰囲気が好きな方におススメの記事があります。機械式でなく、あえて直火式のエスプレッソメーカーについての記事です。ぜひ、どうぞ!

 

安藤製靴|登山靴にルーツをもつ堅牢な革靴の紹介

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安藤製靴のチロリアンシューズ "OR1" | 皮革はクロムエクセル、2010年購入

今回は自分の好きな革靴メーカー “安藤製靴" の話。

革靴といっても普段はスーツを着る仕事ではないので、もっぱらカジュアルに履ける革靴です。

安藤製靴とその革靴の特徴や購入時の注意点、私の気に入っている靴などを紹介します。

 

 安藤製靴の紹介

安藤製靴の概略

安藤製靴は1959年創業の歴史の長いメーカーで、登山靴や登山靴の技術を生かしたアウトドアシューズで定評があります。

店舗は東京の錦糸町のみなので出張のついでにお店に来るお客も多いそうです。(その錦糸町の店舗は火・木・土の週三日しか営業していません)

 

 << 安藤製靴ホームページ (ホームページのデザインは15年以上変わっていないです...)

 

安藤製靴の直営店の場所は下記のとおりです。

 

安藤製靴の製品ラインナップ

その安藤製靴には「PULSE」と「NERO」という2つの製品ラインがあり、「PULSE」には昔ながらの登山靴やワークブーツが、「NERO」にはバイク・タウン向けブーツがラインナップしています。

PULSEの例
  • 登山靴:7000G (本格的な登山靴)OR-8 (町履きも可能) など
  • ワークブーツ:OR-5 (モカシンタイプ)、OR-6 (プレーントゥタイプ) など
  • チャッカーブーツ:250 (定番)、250 スコッチ (次に買うとしたらコレ)
  • 短靴:OR1OR2ホットスタッフなど (この三つは別途紹介)

 

NEROの例
  • Nero (安藤製靴の靴にしてはスマートで、Web上に多くの写真が見つけられる人気ブーツ)
  • ZII (モンキーブーツ。せっかく所有しているのに履く機会がない...)
  • JEREMY 6th (実物をお店でみてすごく欲しくなったが、自分に似合わないと思ってあきらめた...)
  • 他多数 (興味のある方はホームページで確認してください!)

 

安藤製靴のこだわりはノルウェージャン製法と厳選された素材

昔は登山靴中心のビジネスだったようですが、現在はそれ以外のアウトドア向けに多くの製品を展開しています。

その共通の特徴としては、ノルウェージャン製法(ノルウィージャン製法)という登山靴の製造に使われていた製靴法と厳選された素材で堅牢な靴を製造していることが挙げられます

 

ここで、そのノルウェージャン製法って何なの?と思った方、時間のあるときに下記の記事も是非見てみて下さい。

私なりにノルウェージャン製法に関して調べた結果をまとめています。

 

 

さらに、そのノルウェージャン製法で作られた登山靴のDNAを最も強く引き継いでいる (と私が勝手に思っている) 安藤製靴製の "ホットスタッフ" の分解レポートが下記です!

 

 

安藤製靴は製法だけでなく使用する素材にもこだわっており、皮革の品質管理は厳しく、基準に見合うものが入手できないと製造を遅らせたり、販売中止になったりします。 

このような安藤製靴の職人気質のモノづくりのスタンスにも惹かれ、私はここの靴をいくつか所有しています。

最初に購入したのは15年ほど前で、下記のシーホースという靴です。 (見ての通り武骨な靴です)

残念ながら、このシーホースは既に廃盤に...

 

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安藤製靴のシーホース

 

安藤製靴を知るまではあまり靴に興味もなく、履き潰すような気持ちで靴も選んできましたが、ここの靴を履いて以来、手入れしながら長く使っていく " 育てる ” 面白さを知りました。

当然、手入れしながら長く使っていきたい人に応えるための十分な耐久性と品質を持っています。

 

購入時に注意する点

雨が苦手

ただし、意外かもしれませんが雨は苦手です。

コバの縫い目から水が簡単に侵入してきます。

 

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 安藤製靴のシーホースのつま先

 

上の写真の矢印の部分がコパですが、この部分の縫い目 (ステッチ) から水が浸入してきます。

上記のシーホースは縫い目に目止め処理が施されているので浸水経験はありませんが、現行の安藤製靴の靴の大半は目止め処理がされていません。(後で紹介するOR1やOR2なんかは、経験上、ちょっとした雨でも浸水してきます)

ステッチの太い糸太い縫い穴なので、浸水はむしろ容易でしょう。

 

ノルウェージャン製法は防水性がいいと耳にすることもありますが、縫い目に何の処理もしなければ防水性には乏しいです。(皮革自体はオイルドレザーなので、多少の雨は問題ないのですが...)

こういった靴は雨の日には履かないか、履くのであれば縫い目に何らかの処理をした方がよいと思います。(私は目止め処理していない靴は、基本的に雨の日には履きません。一応防水ワックスは塗り込んでありますが...)

この点はアウトドアイメージが強い人だとがっかりするかもしれませんので、購入を検討する際は頭に入れておいた方がよいでしょう。

 

サイズ選び

あとはサイズ選び(安藤製靴HPの説明) ですね...

実際のところ、革靴なのでサイズはしばらく履いてみなければわからないと思います。

ブーツだったら紐で調節できる範囲が広いのでそれほどシビアではないと思いますが、短靴の方ははっきりいって難しい...

少しでも参考になればと、私の持っている靴のサイズ感を下記にまとめました。

 

 

支払い方法

安藤製靴の靴は安くはないですが、支払い方法はいまだに現金のみで、店舗に行くときは注意が必要です。

 

育てる楽しみ

安藤製靴の靴はかなり頑丈で、複数所有しているとなかなか " 育って ” くれません。

しかし、今回の中国転居こそ安藤製靴の靴を " 育てる " チャンスだと思っています。(少し田舎に行けば悪路は多いし、人ごみに行けば踏んだり蹴られたりで、靴に掛かる負荷は日本より大きいはず...)

引き続き、中国でも安藤製靴の靴を育てていきます!(華南地区は緯度が沖縄と近いので、暑くてブーツは履く機会が無いかも... 短靴でも結構暑い...)

 

一年後追記)スコールみたいな雨が多く暑いので、ほとんどホットスタッフとシーホースしか履いていないですね...

 

 

以降、記録の意味も込めて、私の持っているチロリアンタイプの "OR1" とブラッチャータイプ (外羽根式) の "OR2" を紹介します。

また、簡単ですが私の手入れの方法も紹介します。

安藤製靴の革靴に興味のある方は、是非ご覧ください!

 

 チロリアンタイプのOR1 & ブラッチャータイプのOR2

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安藤製靴OR1 & OR2|室内で撮ると色味が若干異なります。

 

今回のOR1とOR2は、共に皮革はクロムエクセルを使用していた旧型になります。

クロムエクセルとは米国のホーウィン社が古くから製造しているオイルドレザーで、足に非常に馴染易く (柔らかく伸び易い) 、独特の光沢がある鞣し皮革です。

 

Chromexcel® — Horween Leather Co. (ホーウィン社の公式サイトです)

 

クロムエクセル自体は有名で上記のリンク先に詳しい説明もあるので詳細は省きますが、近年、品質低下が原因で安藤製靴の要求水準を満たしたものの入手が難しく、安藤製靴では使用を中止しています。(OR1やOR2は、2018年現在、別のオイルドレザーで製造されていて、例えばOR1は ベスタ社 (公式ホームページ) のレザーが使われています)

 

ベスタ社のレザー "ケベック" を使用したOR1については下記の記事で紹介しています。

一言でいうと、クロムエクセルより丈夫で伸び難い感じです。

 

クロムエクセルは伸び易かったり、ヘロヘロになり易かったりと欠点もあるので、私としては他のオイルドレザーでもOKですが、特徴のある皮革なのでまたいつか復活して欲しいです。

 

以下、まず最初はチロリアンタイプの OR1から紹介します。

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安藤製靴OR1|この光沢はクロムエクセル独特です。 (屋外にて)

 

 

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OR1のつま先付近|コバのデザインも特徴的で、工芸品みたいでデザイン的に好きです。浸水してこなければもっと好きですね...

 

 

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OR1|やや水平方向から

 

 

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OR1|前方から 

 

 

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OR1|斜め後ろから

 

続きまして、ブラッチャータイプのOR2になります。

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安藤製靴OR2|皮革はクロムエクセル、色はバーガンディです。

 

 

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OR2|コバ部分のデザインはOR1と共通です。

 

 

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OR2|横から

 

 クロムエクセルの手入れ

“ 育てる " と言っても、クリームやオイルを使用した手入れはほとんどしません。

クリームやオイルを使い過ぎると、このクロムエクセルという皮革はすぐにヘロヘロになって光沢も失われ、" 育つ "というよりは、汚く経年変化します (経験済み)。

オイルやクリームの使い過ぎが良くないことは、どんなオイルドレザーにも共通することですが、クロムエクセルは特にその影響が顕著に表れます。

 

これらのクロムエクセルという皮革は最初からオイルをたっぷりと含んでいるで、さらにオイルを含ませると一気にヘロヘロになります。(使う加減の見極めも難しいです)

そのため、手入れはブラッシングと乾拭きが中心です。

革靴好きはクリームやオイルを使用して、手入れをしたくなりますが、我慢が必要です。

 

たまにポリッシュを使用しますが、安藤製靴でおまけに付けてくれるKIWIのポリッシュは、黒、茶、ニュートラル (透明) のみでバーガンディ色がありません。(ポリッシュはオイル成分が少ないケア用品です) 

バーガンディのOR2にKIWIの茶色のポリッシュを使用していると、光の当たり方によってはかなり茶色に見えてしまい、なんとなく気に入りませんでした。

 

また、KIWIのニュートラルのポリッシュを使用していると、だんだんと色がぼやけて白っぽくなっていき、それも気に入りませんでした。(その色落ちを楽しめる人はよいのかもしれませんが…)

そこで、ある時期から下記のサフィール製のポリッシュを使用することにしました。

 

>>【サフィール】 ビーズワックスポリッシュ 【SAPHIR】(Amazonで見る)

 

サフィールのポリッシュにはバーガンディ色もあるので、まずはこれを購入しました。

色の面はもちろん満足だったのですが、なんと予想外のメリットもありました。

そのメリットとは靴に埃が付きにくくなったことです!

クロムエクセルの皮革は、ただでさえしっとりとしていて埃が付きやすかったのですが、KIWIのポリッシュがそれをさらに助長していたのが、サフィール品との比較でよくわかりました。

 

なぜサフィール品の方が埃が付きにくいかというと、溶剤が乾燥した後の固形分がサフィール品の方が固いためです。

固いためか、効果の持続性もサフィール品の方が長いです。(これは乾拭きした後の布の汚れ具合から判断できます。KIWI品を使用した方が色落ちが早いです)

 

ただし、サフィール品の方が塗りにくいということはありません。

この辺は含まれている溶剤量、もしくは皮革に吸収される油分量で調整しているのでしょう。(溶剤は乾燥しますし、油分は皮革に吸収されるため、表面に残るワックス分は固くなります)

ワックス成分の配合と共に、この辺りは各社のノウハウでしょう。

 

ちなみにこの種のポリッシュによく使用されるカルナバワックス自体は常温では非常に硬く、水にも溶剤にも溶けにくいものです。そのため、カルナバワックス以外に様々な混ぜ物が必要です。(実は仕事でカルナバワックスなどをいじってたことがあります。たぶん靴よりも詳しいはず...)

 

というわけで、私は黒用にもサフィール品を購入してしまいました。(ポリッシュを使用した手入れの頻度も減るし、埃も付きにくくなるので)

他の効果としてサフィール品をクロムエクセルに使用したとき、KIWI品よりもギラギラ感が抑えられた光沢になります。(他のオイルドレザーに使用した場合は、光沢についてはそれほど違いを感じていないです)

 

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安藤製靴OR1 & OR2|二つ並べて真上から

 

上のOR1とOR2の写真はサフィール品で磨いた後のものです。

KIWI品よりもサフィール品の方がやや価格が高いですが、サフィール品はその分の価値はありますので、おススメです。

 

 

以上、ご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

※下記は本ブログの安藤製靴関連の記事です。よろしければどうぞ!

  ※下記はこのブログ内の安藤製靴に関する記事の一覧とそれらの概要です。

 

下記ではベスタ社のケベックレザーを使用した安藤製靴のチロリアンシューズの紹介や最近のチロリアンシューズに関する検索動向をまとめています。