現地採用エンジニアの中国日記

中国の華南地区(深圳周辺)で、現地採用で働き始めたエンジニアです。これから中国で働く方の参考になるような情報を発信をしていきます!

中国で働く日本人|日本人の値段:中国に買われたエリート技術者たち

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今回は最近読んだ本で、中国に関連するものを取り上げてみます。
日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち

日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち

 

この本では中国で働く "流出” した技術者に焦点が当てられていて、中国で働く同じ現地採用の技術者として、当然、私は興味津々に読ませてもらいました。(私自身は "流出” したというよりも、転職もしくは移籍という感覚ですが…)

 

この本の著者の谷崎氏は、基本的に技術者には日本のために働いて欲しいという目線でこの本を書かれていて、実際に中国で働いている技術者やヘッドハンターなどへの取材に加え、谷崎氏のもつ豊富な中国の情報を元に、中国で働く日本人技術者の実情をつづっています。 (谷崎氏はこの本の執筆時点で中国在住14年目です)

 

国も企業も技術者や技術の "流出” にそれほど敏感になっているようにはみえませんが (つまりそれほど問題ではないという見なされているということでしょう)、谷崎氏自身の日本の技術者や技術への評価は全般的に高く、 "流出” に対する危機感が強く感じられます。

取材で取り上げられている "流出” した日本人技術者の印象もよかったのかもしれません。

谷崎氏の取材の結果、その技術者たちはアウトサイダーではなく、多くが大企業出身のごく常識的な人たちでした。

中国で働く理由に関しても、お金目当てというよりはむしろ日本にやりたい仕事がないからということです。

技術は流動性しやすい (他国でも通用しやすい) ため、需要のある地域に技術者が集まったり、好待遇で向い入れられるのは経済的に自然なことです。(反対に流動性が少ない職種の例はセールスで、こちらは言語や文化が障壁になっているので、国をまたがるような流出も流入も比較的少ないです)

 

一方、日本の会社に関してはネガティブな情報が満載です。

例えば、"日本の一流企業では、優秀な人の大半が入社後に退行していく (社内政治に明け暮れるため) ” とか、"高給で働かないオジサンがこんなに多い国は日本だけ” など。

私の感覚でも上記の日本企業への批判は概ねその通りであり、しかも技術系の社員にも当然当てはまることです。

もしかしたら、当初、谷崎氏は日本から "流出” した技術者に対してもっと批判的な内容にするつもりだったのかもしれません。(けしからんみたいな... 本のタイトルも若干、皮肉を感じます)

しかし、技術者や日本企業の実情をより理解し、批判する気も薄れてしまったようにみえます。

むしろ納得してしまったのか、つまり "流出” するのもやむを得ないという気持ちも感じられます。

そもそも谷崎氏自身も好きで中国に住んでいるはずです。

そのため谷崎氏の他の本に比べると、はっきりいって内容の切れ味はイマイチです。(日本人技術者のリアルな実情を知るためには、よいと思いますが…)

 

ちなみに、下記の最近の記事では切れ味よく日本のメーカーを批判しています。

日本の携帯が中国で負けた、誰も言わない本当の理由 | 谷崎光の中国ウラ・オモテ | ダイヤモンド・オンライン

 

"日本のメーカーが消費者のマーケットを読む能力をなくしたから”、これが日本のメーカーが海外でボロ負けした理由とありますが、私も概ね同意です。

マーケットを読む能力をなくした理由の大部分は、上の方で書いたように社内政治に注力してしまうためだと思います。

メーカーの社員であれば思い当たる方も多いと思いますが、役員みたいな偉い人が気に入る製品と、市場でヒットする製品は、ほとんどといってよいほど異なります。(Appleのジョブズはごくごく稀な例)

そんな中で、会社の上層部に気に入られる製品開発・導入に邁進している社員は、市場の声をすくいあげる感覚はマヒしていきます。

社内政治は外資でも存在するのは当然知っていますが、日本の場合、成果に対する評価のウェートも少なく、偉い人が気に入る製品を開発・導入していれば失敗しても怒られないので、それが一番効率的に働くということになります。(終身雇用が大きく崩れない限り)

こういうメーカーの社内政治が苦手な技術者は、市場で受け入れられる製品や技術開発が得意であったとしても社内では報われていないと思います。(リストラや定年退職者だけでなく、このような技術者も今後の "流出” 候補だと思います)

 

本書のメイントピックは技術の "流出” に関してですが、谷崎氏が本書でも述べられているように、国や企業単位で考えれば "流出” かもしれませんが、世界単位では "人類に貢献 です。

社内政治の苦手な技術者であっても市場に受け入れられる製品・技術開発が得意であれば、社外に自分の居場所は見つけやすい環境になってきています。

また、人口減により日本の市場としての価値が低下していく中で、 "日本” に貢献というスタンスで仕事をするのと、 "世界” に貢献というスタンスで仕事をするのでは、自ずとアウトプットに違いが生まれてくるはずです。(シリコンバレーのエンジニアは当然のごとく、後者の気概で仕事をしていると思います)

"会社” に貢献というスタンスもあり得ますが、社内政治を切り離せないので、個人的には嫌いなスタンスです。

私自身は "世界” に貢献というスタンスで仕事をしたいですし、そのために仕事がしやすい環境がたまたま中国の会社であったというだけです。(日本でよい会社が見つかれば、そっちでもよかったかもしれないです)

 

今回の谷崎氏の本は、上に挙げたダイヤモンドの記事みたいな切れ味を期待すると、多少がっかりするかもしれません。

しかし、中国で働く技術者の実情を知りたいという人には、この類の本は少ないため貴重な情報になると思います。

日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち

日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち

 

 

以上、ご覧いただき、ありがとうございました。